

LEG8
8月16日(土)パタヤ
四輪はチーム三菱ラリーアートが3年振りに王座奪還!
二輪は池町佳生選手が7年振り4度目の総合優勝!
2025年8月8日から9日間の日程で行われていた第30回アジアクロスカントリーラリーは8月16日16時、全ての競技を終了した。
四輪は Team MITSUBISHI RALLIART から 三菱 トライトン で出場していた ♯112. Chayapon Yotha(タイ)/ Peerapong Sombutwong(タイ)組が総合優勝を飾った。
Chayapon/Peerapong 組は昨年の覇者 ♯101 TOYOTA GAZOO RACING THAILAND の Mana PORNSIRICHERD(タイ)/ Kittisak KLINCHAN(タイ)組のトヨタ ハイラックスと序盤から激しく首位争いを繰り広げたが、3日目にトップに立つとその後もミスコースの少ない安定した走りで最終日まで戦い、リードを守り切った。
とはいえ、最終日は朝のロードセクションで水周りのトラブルに見舞われて一時走行不能になり、昨年終盤に起きた首位陥落の悪夢が関係者の脳裏をよぎった。だが、ドライバー達の懸命の修理によりスタート時間1分前にギリギリ間に合い、息つく暇も無く走り出して優勝を決める、というTVドラマのような幕切れを演出した。なお、本日8月16日は Chayapon 選手の誕生日。昨年、ゴール2km手前でエンジンがストップした日でもあったが、今年はチームと自分自身に最高のプレゼントを贈ってみせた。
総合3位には初日26番手スタートから怒濤の追い上げを見せた♯142 Feeliq Innovation Motorsport の Bailey Cole(アメリカ)/ Sinoppong Trairat(タイ)組の Ford Raptor が食い込んでいる。T2A-D(量産クロスカントリー車両のディーゼル)のマシンながら、ツワモノ揃いのT1(改造クロスカントリー車両)クラスの上位陣に負けない、素晴らしい走りを披露していた。
なお、四輪のチームアワードは1位が Team MITSUBISHI RALLIART(♯105, 112, 118)、2位が TOYOTA GAZOO RACING THAILAND (♯101, 113, 133)、3位が ISUZU SUPHAN YOKOHAMA LIQUI MOLY RACING TEAM(♯102, 103, 110)となっている。
二輪は日本の池町佳生選手が7年ぶり4度目の総合優勝を果たした。ハクスバーナ FE350 を駆る♯16 池町選手は序盤からリードを広げ、3日目に "タイ王国の絶対王者" ♯46 Jakkrit CHAWTALE 選手を突き放して独走態勢に入った。中盤のLEG5で激しく前転して首を痛めるトラブルに遭ったものの、そのダメージを見事克服。最終日までキッチリ走り切った。2位は言わずと知れた絶対王者♯46 タイの Jakkrit CHAWTALE 選手。3位は♯17 タイ王国のスマティ選手、4位にはラリー経験豊富な♯22 泉本拓也選手となった。泉本選手はレース中盤からずっと4位を維持し、その順位は最後まで崩れることがなかった。
昨年の覇者 ♯1 松本典久選手は5位。3日目にペナルティを受けたのが響き、中盤以降挽回して5位まで浮上したものの、それより上に行くことはできなかった。
Moto
総合TOP10内に日本人選手が6名。例年より長丁場のはずが、終わってみればあっという間の8日間
ついに最終日を迎えた大会8日目、LEG.8の朝は激しくは無いものの昨晩からの雨が降り止まず、SSのルート前半に設定された湖畔沿いをなぞる赤土のフラットダートはしっとりと水分を含み、ライダーたちの出走を待っていた。雨期のタイでは毎晩のように雷を伴う雨が当たり前なのか、夜が明けると不思議と徐々に雨脚が弱まり、昼頃には強い陽射しが流れる雲の合間から降り注ぐ。
タイ王国の未舗装路の地面のことを「赤土」と表現することはもはやお決まりだが、それは一度見れば納得できるのではないだろうか。本当に「赤い土」という言葉以外思い浮かばない、赤レンガ色で細かい砂利混じりの道路がずっと続いている。
午後にフィニッシュセレモニーが控えているため、やや短めの総走行距離約327kmとなるこの日、うち約120kmがSSに設定され、前半約60kmは右手にときおり湖面が視界に入りつつ、直線と緩いカーブや直角カーブが次々と現れるルートだった。起伏が無く単調のように思えるが、これがスロットルワークと荷重移動、ステップワークなどで明確にマシン操作が手に取るように分かる、ライダーにとっては楽しいフィールドとも言える。
この赤土路面の特徴のひとつとして、濡れていてもグリップする部分と、まったくグリップしない、まるで鉄板にべっとりとグリスを塗りつけたような部分があることが挙げられる。
これは砂状かパウダー状かによるのではないかと思われるが、パウダー状の土は乾燥状態ではファンデーションのように細かく軽い粉がカチコチに固まり、タイヤに削られると砂埃となって舞い上がり、いつまでも空中に漂う。逆に水分を含めばネチョネチョでヌルっとしたペースト状に変わる、と言えば想像できるだろうか。
濡れた赤土のダート路面では、砂状か粉上かが見た目ではなかなか分からないものだから、とくに速度を上げる場面では厄介なポイントとなる。そんななか、撮影ポイントで待ち構えるカメラの目の前をアグレッシブに駆け抜けて見せたのが、スマティ選手(#17/Team Musashi International/KTM 250 XCW)と、日本から2度目の参戦となる泉本選手(#22/TEAM JISOK-RR/HUSQVARNA FE450)だった。実際、2人の区間タイムは他者より数分差をつけている。
両者以外に、逆ハン(ハンドルを逆に切ってのコーナリング)を切って見せてくれたライダーはいなかったように思える。これが「絵的」にダイナミックで撮る側としてもテンションが上がるというもの。ちなみに泉本選手は毎日ホイールのワイヤーの張り具合チェックに余念が無かったが、1本折れてしまったらしい。それだけ激しく負荷が掛かっていたということなのだろう。
SS後半は広大な森とプランテーションの間を駆け抜けるラフロードで、タイヤがすっぽり沈むほどの「水場」もしっかり用意されていた。
さて、大会最終日の順位(総合)を見ると、連日上位を競っていた面々が並ぶカタチとなった。
初めてアジアンラリーに参戦したのが2001年という池町選手(#16/Team Musashi International/HUSQVARNA FE350)が自身4度目となる総合優勝を果たし、母国タイ王国出身の王者ジャクリット選手(#46/JC DIRT SHOP/KTM 500 EXC-F)が2位、同じくタイ王国出身のスマティ選手(#17/Team Musashi International/KTM 250 XCW)が3位、そして4位変わらずの泉本選手(#22/TEAM JISOK-RR/HUSQVARNA FE450)、5位には昨年優勝者の松本選手(#1/Indonesia Cross Country Rally Team/KTM 250 EXC-TPI)と続く。
詳細は公式リザルトを確認してもらうとして、上位10名のうち6名が日本からの参戦者という結果となった。前述の選手だけではない日本人の実力者たちが名を連ねている。
今年は30周年記念大会ということもあってか、日本からの参戦者が非常に多く、もちろん初もいる。すべてを終えてアジアンラリーの印象を尋ねると、「また来たいという人の気持ちが分かりました。この祭りのような雰囲気は他では味わえない、とても楽しい。もちろん、モンゴルやアフリカのラリーも楽しいですよ。それぞれ魅力があっていいですよね」と満足そうに話す。
国内外のラリー経験が豊富な参加者は、「やっぱ競い合える仲間と走るのが好きだから、そんな場所があって、一緒に行く仲間がいたらまた参加したいですね」と語る。
本来であれば8日間の競技だったところ、諸事情により2日間の休息日を挟むことになったが、その件について言及する者もいた。
「ちょっと消化不良な部分はあるが、仕方ない。モトクロスのような短時間全力で戦う競技と違って、ラリーは数日間ライダーとマシンに負荷を掛け続けることで勝負に差がつくもの。脱落者が出てくるなか走り続けることで勝ちにつながるわけで、休息日があったことでその負荷が抜けてしまったことは残念。そこはもっと上位に行けたと思う」
1996年から続くアジアンラリーには初期頃から関わってきた参加者の1人は、年齢的に今年が最後だと言う。そもそも70歳をとうに過ぎていながらこの過酷なラリーに参戦し続けていることも驚異的だが、ほぼ毎年クラッシュしては怪我を負い、ときには現地病院へ搬入され、しばらく入院ののち帰国し、日本で手術と治療生活を送ってきたという経緯もある。
周囲の仲間からは「今年は絶対に怪我しないでくださいよ!」「死んだらコ●す!」など冗談交じりで本気で心配する声も多かった。
自ずと参加者の中にはリピーターやベテランが多くなる一方で、今年は初参戦でそもそも競技ラリーも初めてという挑戦者が現れたことも新鮮な出来事だった。
独特な雰囲気を持つアジアンラリーは他の競技ラリーとはだいぶ趣が異なるが、競技であることに変わりはない。「楽しい」だけではけして本当の意味で楽しむことは出来ないだろう。
実際、そんな厳しさを内包しつつ、しかし参戦への「敷居の低さ」はとても重要なこと。自前のバイクとエントリーフィー(ここがキモ)、そして長いお盆休みを確保すればアジアンラリーへのトビラは開かれる。
30年も続けばその間に人も国も政治も変わるというもので、それは本大会にも言えることだろう。この先もタイ王国を中心としたクロスカントリーラリーがライダー(もちろんドライバーも)たちのチャレンジスピリッツを刺激し続けることを願いつつ、終わったばかりでもう来年の開催に期待が膨らんでしまう。
本サイトでは過去のレースの模様をブックレット形式で読むことが出来る。そちらも是非チェックして欲しい。
(文・写真/田中善介)