ハスクバーナ TE250i を駆る♯3 Team Japan の 西村裕典 選手の勢いが止まらない。出走順を決めるために行われたLEG0 の スーパーSSを含め、今日まで行われた3つのSS全てでトップタイムを記録。3日間のトータルタイムでも後続に7分以上の差をつけ、総合トップに立った。
続く2位を獲得したのは昨日3位だった Team Cambodia の ♯20 Koun Phandara 選手(KTM 450EXC-F)。タイムはトップだったが、3分のペナルティによって西村選手の後塵を拝している。
そして3番手は日本から出場しているチーム OTOKONAKI の ♯1 松本典久選手(KTM 350EXC-F)、4位には前日2番手だった Team Cambodia の ♯24 Daravuth Chan 選手(スズキRMX 450Z)が付けた。
この4人だけがトータルタイム6時間以内で肉薄しており、ロングステージが続いた前半戦が終了したところで、優勝争いはこの4人に限られてきた。その後方で Team Japan の4選手を含む6選手が6〜8時間台のトータルタイムで走行しており、第2集団を形成している。
この日、4輪のトップタイムを叩き出したのは ♯101 Isuzu Suphan Explorer Rally Team の Suwat Limjirapinya / Prakob CHAOTHALE 組だ。このいすゞ D-Max は2日目にマシントラブルで大きく順位を落としていたものの、ここ1番の速さは健在。SS内で見ていてもコーナーからの立ち上がりが明らかに速い。
2番手に付けたのはトヨタハイラックス レボ を駆る ♯103 Mana Pornsiricherd / Thanyaphat MEENIL 組。前日はリアのリーフスプリングとプロペラシャフトの破損により前輪駆動での走行を余儀なくされ、14位と奮わなかったが Toyota Cross Country Team Thailand のメカニックは翌朝7時までかかってマシンを完全に直し、復活の走りに繋げている。
なお、チームの僚友 ♯102 Jaras Jaengkamolkulchai / Sinoppong TRAIRAT 組は6番手のタイムを記録。トータルタイムでは前日の5位から3位まで躍進している。
デイリー3番手となったのは Fortuner GEOLANDAR takuma-gp チームのトヨタ フォーチュナー。♯116 塙 郁夫/染宮弘和 組だ。1st Car の ♯108 青木拓磨/ Itthipon SIMARAKS 組を支援しながら、ここまで大きなトラブルもなく、淡々と順位を上げてきている。重量的にハンデのあるSUVながら、並み居るピックアップ勢を押しのけ、気が付けば3日間のトータルでトップと7分48秒差の2位。青木拓磨選手も好調を維持していて、トータルで4位まで順位を上げてきている。
そして前半戦終了時点で総合トップを維持しているのが今年、鳴り物入りで参戦してきた Team Mitsubishi Ralliart の ♯105 Chayapon Yotha /Peerapong SOMBUTWONG 組だ。僚友の ♯118 RIFAT HELMY SUNGKAR / Chupong CHAIWAN 組も総合5位に付け、再浮上の機会を虎視眈々と伺っている。
LEG2の朝、宿泊ホテルを出発し、SS3スタート地点に立つ頃には雨が降り始めていた。11月は乾季と言いながら、タイ(それにカンボジアも)は例年にない降水量により道路への被害も発生している。
LEG0からはたまたま好天に恵まれていたが、とうとう降られてしまった。雨は路面の状況を変えるだけでなく、バイクの場合はライダーの身体を雨粒にさらすことになり、電動マップホルダーや装着義務となった後付けのGPSドライブレコーダーシステムなど、電装系トラブルの不安も高まる。もちろん対策はするが、何も起こらないとは限らない。
SS3スタートから数名が走り出したところで次第に雨も弱まり、雲は残るが昼頃にはいつもの強い陽射しが降り注ぐこともあった。そして路面はウェットからハーフウェット、場所によってドライと、時間と共に変化する。
実際のところ、晴れて路面が乾いていたら前走車の土煙で視界を奪われるが、この日はそんなこともなく、ふかふかの砂は適度に湿り気を帯び、逆に走りやすかったらしい。
「濡れた路面は滑る」とは言うものの、タイの赤土はもともと滑る、乾いた砂にはタイヤを取られる、泥濘の水たまりは大きいか小さいかの違い、岩肌はいつでも硬く、グリップには注意している、とはアジアンラリー経験者のコメント。
初参加のライダーはというと、さらに慎重に走ることになったので、ミスコースはあったものの無難にルートを攻略できた模様。
結果、LEG2でトラブルに見舞われたライダーはおらず、みな完走を果たした。弱い雨はライダーたちにとって適度なシャワーとなったようだ。
一方、SIDECAR部門では、LEG1をデイリタイアした「サイドカートライク」組は完走、「ウラル」組はSS区間の前半を走ったところで車体右側のシートレール破断により、LEG1に続きまたもや途中棄権となった。その後自走でホテルに戻ると近所の溶接屋で応急処置を施し、翌日のLEG3に向け走る態勢を整えた。
主催者いわく、2019年の開催から2回のキャンセルを経て異例の11月開催となった本大会は、いわば病み上がりの「リハビリ」ようなもの。それがMOTO参加者を見ていると、いかにライト級に構築されたものかがよく分かる。
というのも、明るい時間に次の宿泊ホテルに辿り着き、洗車とメンテナンスを済ませ、シャワーを浴び、ディナーで翌日のコマ図を見ながら情報交換をする。ライダー全員が無事その場にいることには違和感を覚える、と言うくらい、過去のアジアクロスカントリーラリーでは誰もが強烈な洗礼を受けていたのだ。
まだ終わってもいないが、本大会の開催を経ることで、2024年大会がこれまで通りの姿に戻るのだろう、と勝手に感じているのであった。