2輪は安泰かと思われていたトップが交代した。Team Cambodia の ♯20 Koun Phandara 選手(KTM 450 EXC-F)が2位以下を3分以上引き離すアナザープラネットぶりを見せ、1位に躍進したのだ。
そして昨日までデイリートップを連発し、総合1位を守ってきた♯3 Team Japan の 西村裕典(ハスクバーナ TE250i)選手はデイリー5位のタイムで総合2位に転落した。とはいえ両者の差はたったの28秒。残る2日のSSが短いとはいえ、勝負行方はまだまだわからない。
そしてこの日、2番手のタイムを記録したのは ♯2 ORANGE FACTORY の 小野拓哉選手(YAMAHA YZ250FX)。前半戦は奮わず、大きなペナルティが課されてしまってたが、中盤戦はSS3で7位、SS4で2位と尻上がりに調子を上げて来ている。
続く3番手は ♯16 Team Japan の 大塚正樹選手(KTM 250EXC-F)。総合のポジションも6位から5位へと挙げて来ている。
先頭グループは昨日までと変わらず。総合3位は ♯24 Team Cambodia の Daravuth Chan(SUZUKI RMX 450Z)選手、総合4位にチーム OTOKONAKI の ♯1 松本典久選手(KTM 350EXC-F)がつけており、優勝争いはやはりこの4人に絞られる、と考えていいだろう。
ラリー2日目以降、四輪は日本の自動車メーカー "三つ巴の戦い" とご報告してきた。が、この日の結果は本当に凄まじい。なんと1位から12位まで、2台ずつ順番にメーカーと車種がキレイに並んだのだ。
昨日に引き続き、トップタイムでゴールしたのは ♯101 Isuzu Suphan Explorer Rally Team の Suwat Limjirapinya / Prakob CHAOTHALE 組だ。タイムも圧倒的に速い。競技にタラレバの話は禁物だが、SS2のトラブルがなければ、先頭集団で走っていたに違いない。
なお2番手には ♯115 Ayumi Racing Team の Tawee Neanna / Athikij SRIMONGKHOL 組のいすゞ D-MAXが続いている。
3番手は ♯103 Mana Pornsiricherd / Thanyaphat MEENIL 組のトヨタ ハイラックス レボ。4番手も同じ Toyota Cross Country Team Thailand の ♯102 Jaras Jaengkamolkulchai / Sinoppong TRAIRAT 組が続いた。なお♯102のハイラックス レボ は昨日の3位から総合2位にまで上がっている。
続く6番手、7番手は Team Mitsubishi Ralliart の ♯118 RIFAT HELMY SUNGKAR / Chupong CHAIWAN組、♯105 Chayapon Yotha / Peerapong SOMBUTWONG 組。♯105 のトライトンは安定した走りで総合トップを堅持。中盤戦を終えて2位に7分半以上の差を付けており、このまま大きなトラブルやミスコースがなければ初参戦&初優勝の実現も夢ではない。また♯118のトライトンも前日5位から4位まで上がっている。
そして8番手、9番手につけたのは初日からトラブルなく安定した速さで走り続けている Fortuner GEOLANDAR takuma-gp のトヨタ フォーチュナー。♯108の青木拓磨(AOKI Takuma)/ Itthipon SIMARAKS 組 と ♯116 の塙 郁夫 / 染宮弘和 組 が連携しながら、素晴らしいチームプレーで戦い続けている。総合順位は ♯116 塙選手が3位、♯108 青木選手が5位。夜間のピットワークの協力体制も含め、チームの雰囲気は尻上がりに良くなって来ている。
明日はタイからカンボジアへの越境だ。直前にSSのコースが10kmほど短縮されたものの、全行程は348kmから433kmへ延長されている。リエゾンとはいえ、その間に大きなマシントラブルが発生すれば順位にも影響してくる。全車共にシェムリアップの町へ集まれるよう、気を引き締めて戦っていただきたい。
LEG3の朝は、姿がくっきりとした密度の高そうな雲が真っ赤な朝焼けの中に浮かび、美しいとも不気味とも言える、幻想的な空模様だった。
時折降り注ぐ雨粒も長くは続かず、日が射せば蒸し暑く、でも風は涼しい。夕方のスコールや夜間の雨はいつものことのようで、乾季でも大地は水分を多く含んでいる。それは本日のスピード計測区間であるSS4も同様、赤土や細かい砂は適度に湿っている。
アジアンラリー経験者にとって、今年だけの異例とも言える内容は、「競技」ではなく「贅沢ツーリング」そのもの。タイのオフロードをコマ図を見ながら攻略する、ゲーミング性もあり滞在中のホスピタリティも充実、これまでの過酷さは姿を見せていない。終始リラックスして走りを楽しんでいる。
一方、初参加者数名もすでに異国の地とコマ図の読み方に慣れてきたようで、海外旅行とコマ図ツーリングをミックスした内容に満足の様子。なにより、カンボジアのアンコールワットをゴールすることが楽しみで仕方ないという。「レンタルバイクでも走ることができないエリアを、自分のバイクで走れるなんて夢のようじゃないですか」と。
そして本日のトピックスは、「サイドカークロス」という欧州を中心に根強い人気のモータースポーツで使われる、モトクロスのようなサイドカーを駆る「Japan Racing Sidecar Association」の渡辺/大関組がLEG2に続く快走を見せたことだろう。
日本では聞き馴染みが無いうえに、まず見ることがない車両がまたエグい。車体は専用の「WSP」製を使い、ハスクバーナのエンデューロマシンから、排気量500ccクラスの水冷単気筒エンジンを搭載している。「宙を舞うサイドカー」とも称される、オフロードをアグレッシブに攻める「サイドカークロス」マシンを、独自にラリー仕様へ組み上げたものだ。
そもそもそのようなサイドカーは前例が無いに等しく、手探りでセットアップとテストを繰り返す、現在進行形のマシンなのだ。前日のトラブルは解決し、細かい調整はまだまだたくさんあるが、走ることができている。
調子が良ければペースも上げていく。車体はこれまでにない動きを見せる。それにドライバーとパッセンジャーが合わせていく。という前向きな状況のなか、走行中フロントタイヤが半分納まるほどの深さの穴に突っ込み転倒。パッセンジャーの大関選手が前方へ投げ出され、背中で受け身を取りケガはなし。渡辺選手も横を向いて倒れた車体とともに地面へ。それなりにダメージを受けたが、骨折などリタイアするほどではないらしい。
明日は短いSSを経ていよいよカンボジアへ移動する。アジアンラリーでは異例の「優しい」内容とは言え、ボーダーをクロスする、クロスカントリーラリーであることに変わりは無い。すでに半分を消化し、残る数日をいかにトラブルなく存分に楽しみ尽くすか。参加者の話の中からはそのような印象を受けた。