競技5日目。戦いはいよいよ後半戦に入った。この日はプレの町を出発して再びプレに帰ってくるループコース。総走行距離は380.58km。176.5kmのSSを挟んで行きと帰りに67.6kmと136.48kmのリエゾンが用意されており、初日や3日目とほぼ同程度の競技時間が組み込まれていた。

ところが、前日夜になってSSの後半が「安全上の理由」によってキャンセルされることが発表され、コースは前半89.62kmのみの戦いとなった。

路面はウェット。なおかつアップダウンの激しい設定だ。ラリー中盤は南下したこともあってフラットな高速ダートが多かったのだが、プレから始まる終盤戦はまたチェンマイ並みに緯度の高い土地に戻ってきており、山がちなセクションがグッと増えている。

特にコース序盤はヌタヌタのグチョグチョ。アップダウンを繰り返しながら、斜面に設けられたトウモロコシ畑の細い脇道をひたすらトレースするような状況で、アクセル全開でカッ飛ばせるような所ではない。もちろん、あちこちでスタック&レスキューが始まり、レースは再び序盤戦のような波乱含みの様相を呈したのだった。

AUTO部門(四輪)で変わらぬ強さを見せたのが ♯101 Nuttapon Angritthanon / Peerapong Sombutwong組のD-Max。総合でもダントツでトップを快走する彼らが、ここでも一番時計を叩き出した。その走りはスムーズそのもの。オンコース上で見ていても、全く無理や無駄のない軽やかな走り方をしている。

二番手には ♯125の Olan Sarnsirirat / Somkiat Noichard 組の D-Max とタイ勢が続き、そして3番手には TEAM JAOS の FJクルーザー、ニッポンの 塙 郁夫 / 赤星大二郎 組がトップから2分半遅れのタイムで入って来た。

ドライバーの塙選手の機嫌もいい。「今日は100点とは言わないけど、クルマは完璧。ドライビングもナビもミスなくソツなくこなせたかな。前日の電気系トラブルもATの不調もメカニックが夜のウチに完璧に直してくれたし、言うことはないね。SSが短くなった分、あとはご褒美の休暇をもらったつもりで体を休めるよ」

そうかと思えば、ナビの赤星選手も「今日はがんばりましたよ! 今日はね、多くのドライバーさんが本当にここで合ってるの? こんなとこ走るの? って首をかしげていたようなコースでも自信を持って指示できましたからね」と明るい表情。

どう見ても前走車の轍がなく、太い倒木がボンネットの高さくらいでクロスして、FJのフロントガラスで木を押しながらじゃないと走れないようなところで、さすがの塙さんも「これは無理でしょう」という状態。「僕なんかはドライバーだからね、轍を中心に見ていくじゃないですか。そしたらここじゃないだろ。クルマが通る道じゃないだろ。ここは真っ直ぐいくべきだろう」と思ったという。でもナビの赤星さんは譲らなかった。「コマが合っていましたからね。今日は自分を信じることにしたんです。今回のアジアXCラリーは10年振りで、なおかつ始まってからミスコースも何度かして、この2日間くらいは自信がなくなっていたんですよ。そうすると、意識のどこかでトラックをおっかけたくなっちゃうんですよね」「あるいは地元のドライバーとか、ベテランのドライバーの判断に従いたくなっちゃう」

「でもこの2日間で学習したのは、地元の人でもベテランでも間違える時は間違えるんだな。結局僕らと同じなんだな…ということ。だったらもう自分を信じようっ」て。

TEAM JAOS は4日目までも決して悪い成績だったわけではない。ほとんど改造していないクルマでも、塙さんがその速さの片鱗を見せる日もあった。でもここへ来て、クルマとドライバーとナビという3つの歯車がガッチリ噛み合わさり、より上手く回り始めたようだ。それが、デイリー3位という成績に直結してしまうところに、このチームの強さがある。

ただし、コース内の戦いは決して簡単だったわけではない。実は♯108の新型トライトンがスタックしてコースを塞いでしまい、あわや今日もキャンセルか? という状況になりかけていたという。後続車もやってきてあーでもない、こーでもない、といろいろやってもラチがあかない…。

でもその状況で「いや、まだ走れる。SSをキャンセルなんかにはさせない」とばかりに、すぐ脇にエスケープルートを開拓してしまったチームがある。ニッポンの#106 伊藤芳朗/平賀健 組(Team TAGA meets NAIRAN/ISUZU D-MAX)だ。彼らのおかげで、後続車が通ることができるようになり、ラリーはキャンセルの憂き目を回避することができたのだ。まわりのタイチームの半分はもうみんなヘルメット脱いで諦めていた、という話なので、彼らのおかげで、5日目もリザルトがしっかり刻まれるようになった、と言っても過言ではない。

そして気付けば、その#106 伊藤芳朗/平賀健 組は総合4位のポジションに。実はドライバーとナビふたりだけで、サービスクルーもつけずに参戦しているのはAUTO部門で彼らのみ。初日から無理せず、淡々と走ってきた彼らが、自らの手でコースを切り拓き、4位にまでポジションをアップさせてきたのだ。ザ・プライベーターともいうべき、彼らの活躍は本当に驚くべきことと言っていい。

AUTO部門

1st #101 Nuttapon ANGRITTHANON (THA) / Peerapong SOMBUTWONG (THA)
2nd #125 Olan SARNSIRIRAT (THA) / Somkiat NOICHARD (THA)
3rd #124 Ikuo HANAWA (JPN) / Daijiro AKAHOSHI (JPN)

MOTO部門

1st #14 Manoch ABDULKAREE (THA)
2nd #1 Keisuke MAEDA (JPN)
3rd #11 Yoshio IKEMACHI (JPN)
#14 Manoch ABDULKAREE (THA)
#8 Olle OHLSSON (SWE)
#20 Magnus OSTERBERG (SWE)

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