4th ♯109 Wichawat CHOTIRAVEE / Chonlanut PHOPIPAT(タイ・イスズ D-MAX)

カンボジア第一ステージ
熾烈なタイム争いを征したのは誰だ!?

ラリーは3日目、中盤戦に突入した。越境後のカンボジアルート最初の舞台となったのは国境沿いの丘陵セクション。南北に連なる尾根に77kmにわたって設定されたスペシャルステージを往復し、合計154kmの距離で争われる。もちろん対面走行になることはなく、2輪、4輪の順に出走した全員がコースを駆け抜けたあとに折り返しの再スタートが切られる、といった具合だ。

あまり前例のないコース設定だが、実は最初から意図して作られたものではない。大会直前にカンボジアにまとまった量の雨が降ったためにコース状況が極悪化。まともに走れないセクションが何カ所も現れてしまい、それを取り除いた結果SSの距離が短くなり、急きょこのような形に設定されたのだという。

ところがふたを開けてみるとビックリ。笑顔で「楽しかった!」と答えるライダーが続出した。何といっても次第に標高を上げていくコースからの眺めはバツグン。原生林が残るカンボジアの風景が一望できたほか、遠くにタイ湾を望むこともでき、戦いながら絶景を楽しむことができたという。また、赤土の締まった岩盤のような路面はグリップがよく、昨日まで所々で苦しめられた「ヌタヌタ」もない。アップダウンは厳しいものの、ハイペースで気持ち良く走れるセクションとして、ライダー達に歓迎されたのだ。これなら逆走も楽しい! と。

ただしハイペースであるが故に、油断して事故を起こしてしまうとマシンや体にいつもより大きなダメージを負ってしまう。路面にも水が流れる際にできた溝が縦横に彫り込まれており、油断はできない状況。時折強烈な強さで襲ってくるスコールの影響も侮れないものがあった。

事実、二輪ではふたつのアクシデントが起きた。ひとり目は ♯30の Ryohei KOIKE さん。突然降り出したスコールで視界を失い、コースから吹っ飛んで右足首を捻挫してしまった。もうひとりは ♯18の Kazuyoshi TAKAHASHI さん。こちらは下り途中の深いクレバスにリアタイヤがひっかかり、あっと思った時には地面に叩き付けられていたという。幸い、KOIKE さんは自力でコースから脱出、TAKAHASHI さんは ハンドルの左側がポッキリ折れてしまったため完走はできなかったものの、その日のうちに修理は完了し、また明日から出走できるようになったという。幸い、体に大きなケガはなかったものの、破れたツナギは転倒時の衝撃の激しさを物語っていた。

そんな中、二輪でトップタイムを叩き出したのは ♯38の 泉本拓也 さん。往路のSS3では ♯1の池町さんが最速だったものの、泉本さんは復路のSS4でそのタイム差を挽回。往復の積算時間で池町さんを逆転、本日のトップ賞を獲得した。なお、この日は SSの合計タイムに FURUKAWA BATTERY からの懸賞金がかけられており、ディナーの際に3位までの選手が表彰され、賞金が手渡されていた。

■FURUKAWA BATTERY賞(MOTO)
♯38 Takuya IZUMOTO(日本)
♯1 Yoshio IKEMACHI(日本)
♯11 Sumaetee Trakulchai(タイ)
■♯38 泉本拓也コメント
「まさか獲れるとは思っていなかったのでとても嬉しかったです。でもバイク(ハスクバーナ FE501)も調子よかったですし、タイヤの選択も良かったと思うんですけど、路面状況がいつも走っていた林道によく似ていて、最後まで気を抜くことなくアクセルを開け続けることができました」
1st ♯101 Nuttapon ANGRITTHANON / Peerapong SOMBUTWONG 組(イスズ D-MAX)

四輪部門では ♯119 Bandit PANTHITA / Phairote PONGSAPAN組(タイ・いすずD-MAX)が往路を征したものの、復路では総合トップをひた走るアジアXCラリーの王者 ♯101 Nuttapon ANGRITTHANON / Peerapong SOMBUTWONG 組(イスズ D-MAX)がトップ賞を受賞した。なお、四輪は3位までが全てタイチームの イスズ D-MAX という結果になり、改めてこの組み合わせがハイスピードセクションでは強いことが証明された形となった。

■FURUKAWA BATTERY賞(AUTO)
1st ♯101 Nuttapon ANGRITTHANON / Peerapong SOMBUTWONG 組(タイ・イスズ D-MAX)
2nd ♯119 Bandit PANTHITA / Phairote PONGSAPAN組(タイ・イスズ D-MAX)
3rd ♯107 Paitoon THAMMASIRIKUL / Somkiat NOICHAD 組(タイ・イスズ D-MAX)
■2nd ♯119 Bandit PANTHITA / Phairote PONGSAPAN組(タイ・イスズ D-MAX)コメント
今日は最高だったよ! 僕の車は何の問題もなく、相棒のナビゲーターも完璧な仕事をこなしてくれた。だからSS3では最速タイムを出すことができたんだ。でも復路では40kmあたりの溝でフロントのドライブシャフトが逝ってしまい、2WDのFRになってしまった。これでタイムを落としてしまったんだよ。でもこの結果は嬉しいよ! 明日からも期待しててね!

二輪同様、四輪でも数台がトラブルに見舞われた。♯102 の 篠塚建次郎 / 千葉栄二 組(日本・スズキ ジムニー)は初日にちぎれ、溶接した右フロントのダンパーマウントが再度脱落。♯112 の 青木孝次 / Roslyn SHEN 組(日本・イスズ D-MAX)ではリアサスのダンパーが片方ずつ時間差で脱落、リアサスのダンパーなしでの走行を余儀なくされてしまった。また、♯123 勝間田祥治 / 深野昌之 組(日本・イスズ D-MAX)はミッションギアの金属疲労か3速を失い、次いで2速や5速も使えなくなったので、ローレンジに切り替え4速でかろうじて完走させることができたという。

やはり、二輪と四輪ではダメージの現れ方が違っている。何かあるとマシンだけでなくライダーにも被害が及ぶ二輪に対し、四輪は蓄積されたダメージによってマシンが根を上げていく。ただし、頑丈な機械にこれだけの疲労が溜まっているのだから、二輪のライダー達の体に疲れが溜まっていないワケはない。それは程度の差こそあれ四輪のドライバーにも同じことが言えることだろう。

ラリーは前半3日を消化し、明日からはいよいよ後半戦に突入する。ヒトにもマシンにもさらに過酷なプレッシャーがかかり続けることになるが、ここを耐え抜いた者だけがゴールのアンコールワットへ辿り着くことができる。さあ、明日はカンボジアの首都プノンペンへ向かう道のりだ。どんな戦いが待っているのか、続くレポートに乞うご期待!(河村 大)

【MOTO】ハイスピードでのライディングスキルが試された1日

#23 Yu SEKIJIMA (JPN)

大会3日目の朝はいつもより早かった。メディアは競技スタートの1時間以上前にホテルを発ち、想定する撮影ポイントへ向かう。主にSSコース内だ。SSスタートが6:35だから、遅くとも5:30までにSSスタート地点へ辿り着き(地図は選手同様のコマ図、それに座標)、実際のロケーションを確認して撮影ポイントを決める。もたもたしていると選手たちがスタートしてしまい、身動きがとれなくなってしまうのだ。

赤土でも締まったダートで緩いカーブと先が見通せないくらいの大きなアップダウンが続く本日のSSでは、誰もがペースを上げていた。排気音のリズムが明らかに違うし、ライディングポジションもほとんど前傾気味。所々ガレ場や深い轍、きつめのコーナー、舗装路面も混じるため、ハイペースでのライディングスキルが試されるステージだった。そこへスコールも加わるものだから、ライダーは視界を遮られてたまったものではない。

終わってみれば、多くはないが転倒者もあり、車体とライダーの損傷からかなりのペースでイッたことがわかる。大会3日目にしてついにケガ人だ。幸い大事には至らなかったが、状況を聞くとよくその程度で済んだと思う。異国の風景に見惚れてホテルでリゾート気分を味わいつつも、これが確かに競技だということを思い知らされる。そのギャップもまた面白いのだが…。

しかしそんな彼らの口からは、決まって「楽しかった〜」の言葉。初日は大会最長のSSに苦しみ、2日目はハードエンデューロ並みの過酷なルートに疲弊し、3日目はハイスピードコースで紙一重のライディング。そして4日目、5日目…と考えると、何かストーリー性が見えてくる。

明日はいったいどんなドラマが待っているのか…(田中善介)。

#6 Olle OHISSON (SWE)
#20 Yuli Kadex RAMAYADY (IDN)
#39 Ryohei KOIKE (JPN)
本日のメグちゃん「最初のSS3はおっかなびっくりで腰が引けてましたけど、戻りのSS4は全然怖くない! なんだか気分もイケイケで、ナビも難しくないし、ちょっと調子に乗ってましたね。いわゆる高速ステージで、250ccクラスのマシンならパワーを使い切って走れる。ハスクバーナFE250はホントにすごい。アクセル全開で走るなんて初めて! すっごく楽しかった。次はFE350が欲しいかも? SSとは逆にRSが怖かった。カンボジアの道路ってなにがなんだかもう…。トラブルもなく無事にビバーク(ホテル)に到着できればリゾート気分も満喫できちゃうし、料理もおいしい。日本よりも体調が良いくらいです。女性としてはラリーと言えども汗臭いのは嫌。清潔さはキープしていきます!」
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