1996の初開催年以来、一度も休むことなく行われて来たアジアクロスカントリーラリーが、今年もタイはアユタヤの地で開幕した。参加台数はMOTO(二輪)が23台、AUTO(四輪)が24台。これに加え、サポートカーが48台、メディアカーが12台、さらにオフィシャルカーも合わせると総勢120台近い台数となり、遺跡の町アユタヤが色とりどりのマシンで彩られることとなった。
競技日程は8月14日から19日までの6日間。今年は国境を越えることなくタイ国内のみで争われるため、一見するとコンパクトな競技エリアに感じられるが、さにあらず。総走行距離は2,154キロメートルと昨年より長く、タイム計測が行われる競技区間も1172kmというロング設定(昨年は805km)。なんとスペシャルステージがリエゾン区間より長いという逆転現象が起きており、例年になくタフで激しい戦いが予想さる。
特に前半のカンチャナブリから中盤のペッチャブンに到る山岳地帯はアップダウンの厳しさはもちろん、アジアXCラリーの歴史の中でも屈指の「ヌタヌタ・ドロドロ」セクションとして知られており、この地に降り続いている雨の影響もあって、ラリーは前半戦から一気に勝敗の命運を決める修羅場になりかねない状況になってきている。
そんな中、AUTOでは連勝街道を驀進中の♯101 Nutthaphon ANGRITTHANON(THA)選手の ISUZU D-Max にストップをかけるべく、Toyota Cross Country Team Thailand の Hilux REVO 2台 が本気モードで準備中。特に昨年2位となった♯102 新堀忠光(JPN)選手は本大会の優勝経験もあるベテランだけに、否が応でも注目が集まるようになっている。
そうなると Nutthaphon選手率いる「The Land Transport Association of Thailand Isuzu」の3台と新堀選手を旗頭にする「Toyota Cross Country Team Thailand」の2台が序盤から激しいチーム戦を展開する可能性も高いのだが、ここに他チームのD-MAX、Hilux REVO、フォーチュナー といったハイパワーマシンも絡んでくるのは必定。もはや選手やチームの枠をも超え、イスズとトヨタというタイにおける2台ピックアップメーカーの代理戦争の様相すら見せ始めている。
また、MOTOでは、昨年チャンピオンに輝いた Jakkrit Chawtle らタイ人の選手に対し、過去に圧倒的な強さを見せていた日本勢が再び一矢を報いることができるのか、そのあたりの攻防も興味深い。さらには、昨年2位と気を吐いたスウェーデン勢の動きも見逃せないだろう。
いずれにせよ、これらの戦いに誰が食い込み、誰が漁夫の利を得ていくのか、ひょっとして大パワー大トルクのマシンよりジムニーのような軽量のマシンのほうが有利なのか? 攻める者が速いのか、守る者が強いのか…、厳しさの予想される天候や路面状況、SSの距離と併せ、興味は尽きない。
この日は車検と公式ブリーフィング、そしてセレモニアルスタートがアユタヤの世界遺産の敷地の中で華々しく行われたが、実際の競技区間が始まるのは明日の朝から。選手はもちろん、大勢のファンや関係者の思惑を飲み込みながら、年に一度の大会がいよいよ始まろうとしている。わざわざ雨期を選んで行われる競技だけに、筋書き通りに行かないのが常なのだが、今年はさらに先が読めなくない状況になっている。ぜひ、最後まで見届けて欲しい。