今大会の天王山となったLEG5のSS。直前にスタート地点が変わり、15kmほど短縮されたものの215km近い長さがあり、守る者にとっても攻める者にとっても実質的に勝負できる最後のSSとなった。
コースは全体的にドライなコンディションながら、ところどころにウェットな区間もあり、田んぼのあぜ道からプランテーション、ガレ場、ロック、など、タイのラリーを凝縮されたようなセクション。
初日LEG1の細かいコマ図に面食らっていた二輪勢もだいぶ慣れたのかソツない走り。ただし、一部極悪なマッドエリアで転倒してしまったり、河渡り時に水の中に隠された穴に足をすくわれ吹っ飛ばされそうになったりした選手がいた模様。
また、♯14 宮崎大吾 選手や ♯22 田崎博司 選手のようにマシントラブルにより出走できなかった選手もいたが、彼らは走り続けるライバル達のサポートに回っていた。近年のラリーでも助け合いの精神はしっかり生き続けているのだ。
この日のハイライトもやはりトップグループの1分1秒を争う戦いだ。総合1位の♯1 Jakkrit CHAWTALE 選手(タイ・KTM 350 EXC-F )は、 4分差で2位につける ♯2 池町佳生 選手(KTM 350 EXC-F)を徹底マークする作戦を続行。池町選手を先に行かせ、ピタリとくっついて走ることでタイム差の温存を図る。
これに後続の選手も追従、池町選手が先頭でコマ図を読み、そのあとを何台もの選手がカルガモの親子のように追いかける、という姿が随所で見られた。
同様に ♯3 の 江連忠男 選手(YAMAHA YZ450FX)も数台のマシンを引き連れていたが、前日の雨によって埃が立ちづらく視界がクリアであるために、慎重にコマ図を読む先頭車が後続を引き離すのはなかなか難しという。後続の選手にとっても、これがミスコースを減らし、自分のタイムアップを図るための、大切な作戦のひとつなのだ。
この状況を打破すべく、ナビゲーションに自信のある池町選手は 中盤の PC 直前でエンジントラブルを演出、敢えて順位を下げてゴールする作戦をとったものの状況は変わらず、トップから3分遅れの4位でゴールすることとなった。
この日のトップは ♯30 FURUKAWA BATTERY INDONESIA の Kadex Yuli RAMAYADI 選手(インドネシア・HUSQVARNA FE250)。2位には ♯3 江連忠男 選手が続き、3位は ♯1 Jakkrit CHAWTALE 選手 という結果になった。
これにより、総合1位 Jakkrit CHAWTALE 選手、2位 池町選手 の順位は変わらぬものの、江連忠男 選手 が3位に浮上。4番手が Chatthai PHRUETISAN 選手という結果になった。
四輪は先頭を走る ♯101 Nutthaphon ANGRITTHANON(タイ)/ Peerapong SOMBUTWONG(タイ)組 を総合2位の Toyota Cross Country Team Thailand ♯102 の 新堀忠光 / Chupong CHAIWAN(タイ)組 がどこまで追い詰めることができるか、が焦点。
ところが 新堀選手のハイラックス レボは前半、フロントウィンドウについた汚れが取れずらく視界が確保できない、というアクシデントが発生、速度を緩めざるを得ず、ドライバーにとってもストレスフルな走りとなった。
そして後半、多数のメディアが待ち受ける目の前でドラマは起きた。線路をわたった直後の幅広な極悪マッドセクションで、前走車の轍をトレースした新堀選手がスタック。ウインチでしか脱出できないような状況に陥ってしまう。
運良く数分後に到着したチームメイト ♯119 Jaras JEANGKAMOLKULCHAI 選手 のハイラックス レボ に後ろからひっぱり出してもらうことができたがここでタイムを大きくロス、先行する Nutthaphon 選手 に対し前後半合わせて37分の差をつけられてしまった。
続く2位は、昨日に続いて ♯115 の Paitoon THAMMASIRIKUL(タイ)/ Somkiat NOICHAD(タイ)組 の イスズ D-Max。3位には Nutthaphon 選手 のチームメイト ♯103 Wongwirot PALAWAT 選手(イスズ D-Max) が続き、新堀選手は6位、チームメイト ♯119 Jaras JEANGKAMOLKULCHAI(タイ)/ Kittisak KLINCHAN(タイ)組 は4位という結果になった。
これにより、総合1位の Nutthaphon と 2位 新堀選手の差は37分36秒の大差となり、Nutthaphon 選手が連続優勝に王手をかけることとなった。
このトップ2チーム4台の激戦の一角に食い込んだのが 4位 ♯106 の Wichawat CHOTIRAVEE(タイ)/ Chonlanut PHOPIPAT(タイ)組 の イスズ D-Max。近年、ステディな走りを身につけ、どんどん上位に顔を出すようになってる。
そして不屈のクルマ椅子ドライバー♯108 青木拓磨 / Ittipon SIMARAKS(タイ)/ 椎根克彦 組 の トヨタ フォーチュナーも6位と入賞圏内につけている。今大会中は床ずれのような症状が再発、体を上から釣りながらのドライビングながら、その辛さを少しも我々に見せようとはず、底抜けの明るさで毎日のラリーを楽しんでいる。
さて、2017年のアジアクロスカントリーラリーもいよいよ明日19日のLEG6を残すのみ。最後のSSは80kmと短めの設定だが、最後まで何がおきるかわからないのがこのラリーの怖いところ。果たして、ゴールにトップで飛び込んでくるマシンは何色なのか? ポディウムの頂点に立つライダーは誰なのか? 参加選手達は無事ゴールできるのか…?
本大会を締めくくるフィニッシュセレモニーはスタートの地、アユタヤの世界遺産の中で行われる。
「ラリー」とはフランス語で「集合させる」という意味の「ラリエ」が語源とされている。体力も精神力もスタミナも、限界まで引き出しながら戦ってきた選手達も、それを不眠不休でサポートしてきたメカニック達も、チームや大会を支えているメーカーやスポンサーの関係者も、全ての人が、ここに戻り、互いの健闘をたたえ合う。
そのセレモニーに、だれひとり欠けることなく到着して欲しい。クロスカントリーラリーに憧れ、この世界に足を踏み入れた全ての人と、応援してくださったファンの皆さんに万感の想いを込めて、グッドラック!