Race Report 2017
LEG 6

昨年から続く因縁のトップ争いに終止符
LEG6_8/19(土)パクチョン ー アユタヤ 288.16km


8月14日に古都アユタヤをスタート、右回りにループを描きながらタイ中北部の山岳地帯を抜け、平野部に戻ってきていた 2017年のフェデラルーベッセル アジアクロスカントリラリーもいよいよ最終日を迎えた。エントラント達は最後のSSを午前中にこなし、フィニッシュセレモニーの行われる アユタヤのヒストリックパークまで一気に南下することになる。

最終SSは80kmと短いものの、とてもチャレンジングなステージだ。コース上には尖った岩や深い轍も多く、ラスト30kmに至ればハイスピードセクションも現れる。ウェットであればブレーキを少し踏むだけで滑り出してしまうような下り坂もあり、コースアウトにタイヤバースト、駆動系のトラブルなど、少しでも油断すれば順位が大幅に変わってしまう可能性も存在する。選手達にとっては最後まで気の抜けない1日となった。

とはいえ、今年のアジアクロスカントリーラリーは、これまでのところ二輪四輪ともにリタイアが1台も出ていない。全体を通じて今年のタイステージはナビゲーションが難しかった反面、カンボジアステージのように1ミスでサスペンションや駆動系を大破させるような超高速かつ凹凸の激しいダート区間が長く続いていたわけではなく、マシンよりもナビゲーターが苦労したレースだった、ということもできるだろう。それが完走率の高さに繋がっていたワケだ。

とはいえ、最終SSでも幾つかのトラブルがあった。序盤のロックセクション等でタイヤをバーストさせてしまうチームも幾つかあり、前車とのタイムを縮めるどころか、順位の維持に専念して慎重に走ったチームもあったようだ。

なお、この日は「FBアワード」が設定されており、二輪四輪ともに当日トップ3のチームに古河電池より賞金が授与されることが事前にアナウンスされていた。

その賞金を得ることができた上位3人をご紹介しよう。二輪の1位は♯2 池町佳生 選手(KTM 350 EXC-F)、2位は♯1 Jakkrit CHAWTALE 選手(タイ・KTM 350 EXC-F )、3位は ♯7 Pruchayar CHAIYASOTHI 選手(タイ・HUSQVARNA )。

四輪の1位は♯115 の Paitoon THAMMASIRIKUL(タイ)/ Somkiat NOICHAD(タイ)組(イスズ D-Max)、2位は ♯119 Jaras JEANGKAMOLKULCHAI(タイ)/ Kittisak KLINCHAN(タイ)組(イスズ D-Max)、3位は ♯101 Nutthaphon ANGRITTHANON(タイ)/ Peerapong SOMBUTWONG(タイ)組(イスズ D-Max)となっている。なお、この日はインドネシアの女性 Lody NATASHA 選手がハンドルを握る ♯126 の イスズ D-Max が9位という好タイムでゴールしたことも付け加えておこう。



初日のLEGでチェックポイント不通過による1時間のペナルティを受けたものの、LEG2には総合3位、LEG3で総合トップに立つとそのまま最後までトップをキープし続けた ♯1 Jakkrit CHAWTALE 選手(タイ・KTM 350 EXC-F )。

これを受け、二輪の総合優勝は♯1 の Jakkrit CHAWTALE 選手、2位は♯2 池町佳生 選手、3位は♯3 江連忠男 選手となり、昨年と全く同じ結果になった。

池町選手は結局、ジャクリット選手による徹底マーク戦法によって前半戦でつけられた4分のタイム差を1分しか縮めることができなかった。後半戦は路面がウェットになり、埃が立たず視界がクリアになったこともジャクリット選手に有利に働いた。池町選手曰く「ジャクリット選手の技量が数年前より向上して、突き放すことができなかった。密着戦法はさすがに堪えたが、これは前半でタイム差をつけられてしまった自分の責任。来年は対策を考えます」とのこと。


一度リードを奪ったあと、♯2 池町佳生 選手(KTM 350 EXC-F)を徹底的にマークし続け、逆転のチャンスを全く与えなかった ♯1 Jakkrit CHAWTALE 選手(タイ・KTM 350 EXC-F )。この日もふたり揃ってのフィニッシュとなった。ジャクリット選手の作戦勝ちだ。

初日から総合トップの順位を一度も譲ることなく、最終LEGのゴールに飛び込んできた ♯101 Nutthaphon 選手(イスズ D-Max)。LEG4の終盤でマシンにダメージを与えるミスがあったもの、その他のステージではクレバーかつステディな走りで追いすがるライバル達につけ入る隙を全く与えなかった。

四輪の総合優勝は♯101 Nutthaphon ANGRITTHANON(タイ)/ Peerapong SOMBUTWONG(タイ)組(イスズ D-Max)、2位は♯102 の 新堀忠光 / Chupong CHAIWAN(タイ)組(トヨタ ハイラックス レボ)、3位は ♯119 Jaras JEANGKAMOLKULCHAI(タイ)/ Kittisak KLINCHAN(タイ)組 (トヨタ ハイラックス レボ)となった。「Toyota Cross Country Team Thailand」によるワークス参戦は2年目を迎え、昨年のテスト参戦2位を踏まえて、今年は総合優勝を狙っていたが、結局 連続チャンピオン Nutthaphon 選手 の牙城を崩すことはできなかった。なお、当ラリーに参戦し続けている不屈のクルマ椅子ドライバー 青木拓磨 選手はクルマをフォーチュナーに変えた今年、総合6位まで浮上している。

クラス別にみると、T2Dクラスでは♯103 Wongwirot PALAWAT / Thanyaphat MEENIL 組 が優勝、T1G(ガソリン)クラスでは♯109 篠塚建次郎 / 千葉栄二 組 がジムニーシエラで優勝し、3年連続クラス優勝の栄誉に輝いた。ここ数年はジムニーが2台以上参戦する姿が当たり前となってきており、今年の3台に続き、来年以降さらに増える可能性が見えてきている。ジムニーは、日本など国外からコンテナで運ぶ際、通常であれば2台しか入らないところ、3台積めるため船賃が大幅に安くなるというメリットがあり、打倒レジェンド! を目標にクラス間の戦いも白熱してきたので今後ますます目が離せなくなってきている。


また、1台限りの参考参戦となった サイドカークラスの ♯151 Rising Sun Racing & Team Iwamoto の 渡辺正人 / 岩本徹男 組(URAL Gear Up)は、連日のトラブルを克服し、SSを途中キャンセルし続けながら長丁場のラリーを無事完走、ロードセクションだけでなくSSの面白さをサイドカーで体験できることを証明してくれた。もちろん二輪四輪と同じディスタンスでの競技は成立し難いと思うが、来年以降のクラス創設に繋がる可能性を見せてくれた。


トラブルをかかえつつも、マシンを修理しつつ ゴールまで辿り着いたサイドカーのふたり組 ♯151「Rising Sun Racing & Team Iwamoto」の 渡辺正人 / 岩本徹男 組(URAL Gear Up)は遺跡の前で記念撮影。表彰式で流されたラリーの振り返り映像では、ウラルの走行映像が流れる度に拍手喝采がわき起こり、思いも掛けず特別賞も授与されていた。

そして午後16時過ぎ、ヒストリックパークを包む風が少し涼しくなってきた頃、フィニッシュセレモニーが始まった。6日前の夜、目映いばかりの光りを浴びながら通り抜けたゲートをふたたび、誰ひとり欠けることなく通過できた今年のラリー。参加者ひとりひとりの胸には様々な想いが去来していたと思うが、ポディウムの上に立った彼らはみな誇らしげに見えた。その後、オフィシャルホテルのディナー会場にて表彰式が行われ、厳しかった戦いを吹き飛ばすように飲んで、笑って、握手して、記念撮影の山を築きつつ、別れを惜しみながらそれぞれの部屋に帰っていった。

なお、二輪のチームアワードは♯2 池町佳生 選手、♯3 江連忠男 選手、♯5 Sumaetee TRAKULCHAI(タイ)が所属した「Team FB International」が優勝、♯11 Rudy POA 選手(インドネシア)、♯30 Kadex Yuli RAMAYADI 選手 (インドネシア)の「Team FURUKAWA BATTERY INDONESIA」が準優勝。

四輪は♯102 新堀選手、119 Jaras JEANGKAMOLKULCHAI 選手(タイ)の「Toyota Cross Country Team Thailand」が優勝、♯101 Nutthaphon ANGRITTHANON 選手、♯103 Wongwirot PALAWAT 選手、♯107 Sirichai SRICHAROENSILP 選手の「The Land Transport Association of Thailand Isuzu Singha Team」が準優勝となった。そして、年々その走りが安定してきている「TATA Motors Team Thailand Insinght」チーム が3位、「IRONMAN SAKEO KING OFF ROAD」が4位、「Team Monchi」が5位入賞となった。


優勝した♯1 Jakkrit CHAWTALE 選手(タイ・KTM 350 EXC-F )。日本のトップライダーと互角以上の戦いで2年連続チャンピオンとなった。

2位の♯2 池町佳生 選手(KTM 350 EXC-F)。ジャクリット選手同様、LEG1で1時間のペナルティを受けたあとの復活劇で上位に浮上、そのまま後続を突き放し、2年連続の2位となった。

3位の♯3 江連忠男 選手(YAMAHA YZ450FX)。LEG1のペナルティーこそ受けなかったものの中盤までナビゲーションに苦しんで順位を下げてしまう。しかし後半に調子を取り戻しLEG5で3位に浮上すると、その順位を守り切ってフィニッシュした。

今やアジアクロスカントリーラリーAUTO部門の顔となった♯101 「The Land Transport Association of Thailand Isuzu Singha Team」の Nutthaphon ANGRITTHANON(タイ)/ Peerapong SOMBUTWONG(タイ)組(イスズ D-Max)。昨年に続き「Toyota Cross Country Team Thailand」という強力なワークスチームのからの挑戦を受けたものの、しっかりと王座を守り切った。

昨年に続き2位の成績でラリーを終えた ♯102「Toyota Cross Country Team Thailand」 の 新堀忠光 / Chupong CHAIWAN(タイ)組 (トヨタ ハイラックス レボ)。万全のチーム体勢で総合優勝を狙った今年もチャンピオンをあと一歩の所まで追い詰めるも、追い越すまでには到らなかった。だが、今年のラリーを一番盛り上げてくれた存在であったことは疑う余地がない。トヨタの意地をかけて、来年も挑戦してもらいたい。

同じく「Toyota Cross Country Team Thailand」の ♯119 Jaras JEANGKAMOLKULCHAI (タイ) / Kittisak KLINCHAN(タイ)組。102号車がトヨタ&TRDカラーであるのに対し、こちらは鮮やかなファルケンカラーが目印だった。初日の17番手スタートから目覚ましい追い上げを見せ、総合3位の座を獲得した。

今年は、2輪勢の因縁の戦い、イスズとトヨタの大激戦、TATAチームの躍進、サイドカーの完走など、さまざまなトピックに飾られた競技だったが、何よりも嬉しく、有りがたかったのは全選手全チームが完走できたことだろう。これも参加者皆さんの不断の努力があったればこそ。来年はさらに安全かつ公平な競技を目指し、みなさんにより一層楽しんでいただける大会にしたい。

これにて2017 フェデラル ベッセル アジアクロスカントリーラリーは閉幕する。果たして来年はいったいどんな戦いが繰り広げられるのか? 願わくばまた1年後、この地にて相まみえんことを!



フィニッシュセレモニー後、ホテルで行われた表彰式で、四輪は総合3位までまでが表彰され、トロフィーと賞金が授与された。

こちらは T1D(ディーゼル) クラスの表彰式。この大会はディーゼルマシンのほうが多く、4位までは総合順位と同じだ。4位は ♯106「ISUZU DELO Sport YOKOHAMA VVP 4X4 Lenso ART OFFROAD Team」の Wichawat CHOTIRAVEE(タイ)/ Chonlanut PHOPIPAT(タイ)組(イスズ Mu X )、5位に ♯108 「FORTUNER GEOLANDAR takuma-gp」の青木拓磨 / Ittipon SIMARAKS(タイ)/ 椎根克彦 組(トヨタ フォーチュナー)が入った。

歓びを全身で表現する T1Gクラス の入賞者達。1位は ♯109 「Team FB Shinozuka CTS」の 篠塚建次郎 / 千葉栄二 組(スズキ ジムニー シエラ)。2位は ♯118 「Garage MONCHI with KONYUDO-KUN」の 竹野悟史 / 柳川直之 組、3位は同チームの ♯124 浜口浩一郎 / 須藤慶伍 組(スズキ ジムニー)となった。なお、篠塚 / 千葉 組は3年連続のクラス優勝、安定した強さを見せている。

MOTO部門の表彰式。1位が ♯1「JC DIRT SHOP7 SITTIPOL RALLY TEAM」の Jakkrit CHAWTALE(タイ・KTM 350 EXC-F)。2位は ♯2「Team FB International」の 池町佳生 選手(KTM 350 EXC-F)。3位は ♯3「Team FB International」の 江連忠男 選手(YAMAHA YZ450FX)。続く4位に ♯9 Chatthai PHRUETISAN(タイ)選手(HONDA CRF250 Rally)がつけ、5位は♯30「FURUKAWA BATTERY INDONESIA」の Kadex Yuli RAMAYADI(インドネシア HUSQVARNA FE250)、6位は ♯7 Pruchayar CHAIYASOTHI(タイ・HUSQVARNA)という結果になった。

最終SSを駆け抜ける ♯20 金子太 選手(YAMAHA YZ250FX)と ♯21 木村智正 選手(YAMAHA WR450F)。

競技区間上でタイの女性ライダー ♯24 Narisara KHAMTAI(K45 HONDA CRF250L)をケアしつつ見守る ♯10「Team FB International」の 福村久澄 選手(KTM 300 EXC)。

SS上でもピースサイン。楽しみながら走っていた♯16「ETENOIR」の 小野拓哉 選手(YAMAHA YZ250FX)。

2日目のロングヒルクライムで転倒し、右足の股関節と左のあばら骨をひどくいためてしまった ♯18「Green Tortoise」の 牧田哲 選手(KTM 250EXC-F)。それでも、競技はキャンセルしつつホテルからホテルへ移動し続け、最終日のフィニッシュセレモニーを通過した。結局、リタイアはしなかったのだ。ブラボー!!

トラブルをかかえつつも、マシンを修理しつつ ゴールまで辿り着いたサイドカーのふたり組 ♯151「Rising Sun Racing & Team Iwamoto」の 渡辺正人 / 岩本徹男 組(URAL Gear Up)は遺跡の前で記念撮影。表彰式で流されたラリーの振り返り映像では、ウラルの走行映像が流れる度に拍手喝采がわき起こり、思いも掛けず特別賞も授与されていた。

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