8月15日(水)晴時々曇
ブリーラム → シェムリアップ
SS 80.20km, リエゾン 350.39km
タイからカンボジアへ陸路で国境を越えるこの日、タイ国内最後のSSが行われた。リエゾンを含めた最終目的地シェムリアップまでのトータル距離が430kmと長いこともあり、SSの距離は80kmと比較的短い設定。とはいえ、LEG4以降のカンボジアエリアではコースが単純化することが予想されているため、ナビゲーションで差がつきやすい最後のSSとして、多くの選手にとって気の抜けない1日が始まった。
主催の笹(Sasa)によれば「やはり道路は人口の多いところに作られていくものなので、昔から人口の多かったタイでは道が縦横に分岐しながら広がっているが、カンボジアは人口が少なく分岐はおろか道路そのものが少ない」とのことで、これが両国のSSの違いとなって現れてくるという。
ただし、先行してスタートした二輪の競技中に「四輪のSSはキャンセル」との連絡が各地に入り、SSスタート付近に集結していた四輪のチームはそのままリエゾンで国境へ向かうこととなった。理由はコース内の橋が壊れたのが原因と伝えられた。
走り終えた選手曰く「最初はフカフカの白砂。若干、林の中を抜けるルートもあったが、細い枝道が続くコースはアジアンラリーならでは。好きなライダーには楽しいところ」だったという。また、「川沿いのコースはカンボジアの高速フラットダート並み。穴も無く、変に転倒の原因になるようなところは少なく、ひたすらダートをかっ飛ばせる楽しさは北海道でも味わえないほど。海外ラリーならではの感覚を存分に楽しめた」とのことだった。80kmという距離についても「疲れる前に終わるようなさじ加減。キツイ日ばかりでは嫌になるところに楽しめる日も設けてあり、前半3日間を終えてよく練られていると思う」という意見もあった。
なお、昨日まではトップ4台が積算タイム7分の間にひしめく団子状態の展開で、誰がトップになってもおかしくない状況だったが、この短いSSによってタイム差がクッキリ広がり、後半戦に向け、とても影響の大きなSSとなった。
混戦の中から頭ひとつ抜き出てきたのは昨年のチャンピオン ♯1 JAKKRIT CHAWTALE 選手(タイ・KTM 500EXC-F)。2位は11分遅れで チーム FBインターナショナル の ♯2 YOSHIO IKEMACHI 選手(日本・KTM EXC-R)、さらに6分ほど遅れて ♯5 SUMAETEE TRAKULCHAI選手(タイ・Husqvarna FX350)、そこから9分遅れで ♯4 KOUN PHANDARA 選手(カンボジア・KTM 450EXL)という展開になった。続く5番手の ♯3 TADAO EZURE 選手(日本・YAMAHA YZ450FX)がトップから56分遅れ、6位以降はトップから1時間半以上の差がついているので、優勝争いはほぼ、トップの4台に絞られたといっていいだろう。
この日、四輪とサイドカーの競技はなし。SSスタートの地点からリエゾンでそのままカンボジアとの国境を越え、さらに163km走ってアンコールワットにほど近い町 シェムリアップ のホテルにチェックインした。いくつかのチームにヒアリングしたところ
「燃料系のトラブルを解決できたので全開で走りたかった」
♯123 HANAWA / SOMEMIYA 組(日本・TOYOTA Hilux-Revo)TEAM GEOLANDAR
「初日の駆動系トラブルを解決し、2日目は5位に入るなど調子がよく、さらにマシンのポテンシャルを試していきたかったので走りたかった」
♯107 NOTO / TANAKA 組(日本・トヨタ HILUX)TEAM JAOS
「序盤で溜まった体の疲れをとることができ、2日目に壊れた右前輪の修理を完璧に行えたのでよかった」
♯118 AIKAWA / YASUI / MIYAMOTO組(日本・トヨタ ランドクルーザープラド)FLEX SHOW AIKAWA Racing Team
など、チームによってその反応は違っていた。
なお、昨年に引き続きロシア製のサイドカー「URAL Gear Up」が参戦しているが、今年は1台増え、2台でのエントリー。昨年の経験を踏まえ、今年はSS内の走行距離を短く調整しながらリエゾンと合わせてラリーを楽しんでいる姿が見受けられる。3 輪のウラルは側車のタイヤをも駆動する「2輪駆動」が可能なため悪路の走破性が高いのが特徴。AXCRのような路面を楽しむにはもってこいの乗り物なのだが、オフでは2輪のオフロードバイクほどスピードが出せず、また凸凹路面では操るドライバーと側車に乗るパッセンジャーに疲れが蓄積しやすいのが玉に瑕。したがって他の競技車両と同じ距離を同じタイムスケジュールで戦うのは現実的ではないが、ツーリング気分でオン・オフの移動を楽しむ手段として今、AXCRへの参加が注目されている。今年は2台だが3台集まれば独立したクラスも創設可能とのことで、そうなればまた違った形で互いに競い合う楽しさも生まれてくるはず。今の所出場は日本人のみだが、各国の選手やメディアから注目を集めており、今後目が離せないクラスであることは間違いない。