8月16日(木)晴
シェムリアップ → コンポントム
SS 147.91km, リエゾン 178.00km, 総計 325.91km
カンボジアへ入国し、シェムリアップ の町で一夜を過ごした一行は翌朝ホテル前から一斉にスタートし、一路、世界遺産のアンコール遺跡群 を目指した。アンコールワットは12世紀に建立された石造りのヒンドゥー教寺院で、アジアクロスカントリーラリーでも度々ゴールセレモニーが行われる場所として馴染み深いが、今大会は経由地として設定され、その北側にある城郭都市 アンコールトム の中を全車コンボイで走り抜ける、という趣向で登場した。
アンコールトムを訪れたことのある人はいると思うが、城郭の四面に配置された門を自分のクルマで通り抜けたことのある人などほとんどいないだろう。二輪、サイドカー、そして四輪と総計50台以上の競技車両が 観世音菩薩の彫刻が施された南大門をくぐり、中央の寺院 バイヨン (Bayon) を抜け、東門から抜けていく様は圧巻のひと言。実際に走ったドライバーやライダーには素晴らしい思い出となったことだろう。
この日のSSは147.91kmとやや短めの設定だったが、開始早々20kmあたりでスタックするクルマが続出。二輪四輪ともに前半からサバイバルレースの様相となった。スタック地獄の修羅場となった地形は「ウォーターベッド」と呼ばれる水没したあぜ道だ。これはカンボジアやラオスの一部で見られる道で、あぜ道が田んぼより低いために雨が降ったりして水量が増すと溢れた水があぜ道に流れ込み、川のようになるというもの。この日は水深がバイクから降り立ったライダーの腰まで達するような場面もあり、四輪でも走行時に茶褐色の水がボンネットの上まで襲い来ることもしばしば。そんなコースが延々数kmも続いたという。路面が見えないだけに前走車やスタック車両を追い越そうとしたり、ラインを少し変えようとしただけで溝や穴に捕まって即スタックという場面が多々見受けられ、何よりも経験値と慎重さが要求されるセクションとなっていた。
そんな中、二輪は地元カンボジアの ♯10 KOUN PHANDARA 選手(KTM 450EXL)がステディな走りでトップタイムを記録、2位の ♯2 YOSHIO IKEMACHI 選手(日本・KTM EXC-R)を挟んで3位にもカンボジアの ♯21 DARAVUTH CHAN 選手(SUZUKI RMX450Z)が入賞した。
ウォーターベッドでの走りについて池町選手は「地面に何が隠れているかわからない状況ではひたすら無理をせず、ゆっくりゆっくり、路面を確かめながら着実に走った」とコメントしており、逆に、延々続く困難な状況で「えいやっ!」とやってしまったライダーは水面下の凹凸に足を取られ、ある者はバイクを転倒させ、ある者はエンジンを水没させ、あるいは無理にもがいて駆動系を痛めてしまったりしてリタイアやタイムオーバーを余儀なくされたとのことだった。
というわけで出走27台中9台に9時間半のペナルティーがつき、上位選手のタイムにも大きな変動があっため、FB International の池町(IKEMACHI )選手が2位に13分差、3位に1時間の差をつけてトップに躍り出た。ここ2年ほどチャンピオンの♯1 JAKKRIT選手のクレバーかつ執拗なマーク走法に打つ術がなく、2位に甘んじて来たが、この極悪コースを制したことでライバルとのタイム差が大きく広がり、「優勝」の二文字が射程圏内に入ることとなった。
なお、4位と5位には 乾燥の大地 オーストラリアからやってきた ♯23 DAWSON GRANT EDWARD 選手(KTM 350EXC-F)と ♯22 TAYLOR BRADLEY JON 選手(KTM 350EXC-F)がつけ、極悪ウェットな状況でも彼らが十分に強いことを証明してみせていた。
四輪は大波乱が起きた。2日目まで Natthaphon 選手に12分差でくらいついていた TRD(Toyota Cross Country Team Thailand)の ♯114 Mana / Kittisak 選手(トヨタ HILUX)が ウォーターベッドで痛恨のスタック。脱出に手間取って総合タイムでもトップから1時間52分差の5位にランクダウン。同じく3位を走っていた TRD の ♯103 Jaras / Chupong 組(トヨタ HILUX)は10km地点でパンクによるタイヤ脱落に見舞われ、続く40km地点で左のフロントブレーキが壊れてスタック。大幅にタイムをロスして最大ペナルティー(9時時間半)が加算され、総合タイムでも12位まで後退してしまった。
対する Isuzu The Land Transport Association of Thailand チームは チャンピオン の ♯101 Natthaphon / Peerapong 組 が貫禄の走りでデイリートップ。僚友の ♯108 SIRICHAI / PRAKOB 組(いすずD-MAX)と ♯105 Wongwirot / Thanyapat 組(いすずD-MAX)も快調に走りきり、総合でも3位、4位につけてチャンピオンの援護射撃を行っている。
このチャンピオンチームの一角に風穴を開け、総合2位をキープしているのが Sakaew King Off Road Isuzu Team の ♯112 Chamnan / Chonlanat 組(タイ・三菱トライトン)、この日もデイリー2位と安定して速い走りを披露していた。
そしてデイリーで3位を獲得したのは、TEAM JAOS の ♯107 Noto / Tanaka 組(日本・トヨタ Hilux-Revo)だ。初日の駆動系トラブルで絶望的なペナルティーが加算されて順位を大きく下げていたが、LEG2から続く好調の波にプラスして、この日11台ものマシンが最大ペナルティーが加算されたことで総合順位も初日の23位から10位へと大きくジャンプアップを果たしている。
なお、前半戦でたくさんのトラブルを抱えながらノーペナルティーのまま堪えて来た Garage Monchi & Micchi の ♯110 Takeno / Michihata 組(日本・スズキ Jimny)はこの日もマックスタイムギリギリながらペナルティーを回避。多くのチームが下位へ脱落していく中、総合順位を9位までランクアップさせている。
明日コンポンチャムへ至るLEG5のSS距離は133.33km。最終LEG6のSSが23.32kmと短いこともあり、実質的にここが後半戦最大の山場となるはずだ。