毎年、東南アジア地域の雨期まっただ中の季節に行われるアジアクロスカントリーラリーだが、今年は毎日のようにスコールが降り、ある意味順調に雨水が地面に染みこみ続けている。どこまでも乾ききった路面が続くハイスピードレースの年もあるのだが、今年はウエットな区間もしっかりあって、競技としては硬軟バランスのいい路面状態が続いている。
とはいえ、雨の多かった場所では所によりクルマが走れなくなってしまうほど荒れてしまうのも悩み所。競技2日目のSSもオーガナイザーによる前日の試走により前半約50kmがキャンセルされることになった。それでもSSは180km近く残っており、リエゾンを含む総走行距離も600km近く。今大会最長となる移動距離であることには変わりなかった。
SS内は基本的にプランテーションがメイン。ところどころ、ややハイスピードな区間があって、その他はマッディだったり、ロックがあったり、穴の多いラフロードだったり、非常に狭い道だったりと、ルートブック内に多くのコーションマークがあるようなテクニカルはコースだった。
この日のSS評は「砂、岩、赤土、白い堅くて砂がまぶした路面など、路面が多様で飽きなかった」とのこと。そして「SS終盤はハイスピードで楽しかった」という意見も多数。ところが後半のSSでハードなロックセクションがあり、タイヤが一部裂けたエントラントもいた模様。応急処置してクリアしたものの調子に乗るとリムやディスクの破損に繋がるので慎重に走ったとのことだった。また、終盤戦でリアタイヤがバーストして、そのまま修理することなくゴールまで駆け込んでいた選手もいた。
ルートは「ミスコースもあったがそれほど難しいものではなかった」とのこと。ただし帰りのリエゾンで視界が遮られるほどのスコールに遭った人もいて、アジアクロスカントリーラリーならではの洗礼はしっかり用意されていた模様。とはいえ、今のところ深刻なマシントラブルや負傷によって戦列を離れるライダーはおらず、2日目も比較的順調に競技を終えた。
そんな中、トップタイムを叩き出したのは♯6の 江連忠男 選手(FB International)Yamaha YZ450FX。なんと2位に7分近く大差をつけるタイムでゴールした。2位は昨日同様♯3のJakkrit CHAWTALE選手 KTM 450 EXC-F。3位は♯2 Koun Phan DARA選手(Dara Motorcycle TOP 1 Oil)KTM 450EXL となった。
続く4位は昨日トップだった♯21 David ROPER選手、5位は昨日も5位だった♯9 Kyle ROBERTSON選手、6位の♯1 池町佳生 選手も昨日の順位と同じと、昨日のトップグループが順当に上位をキープした形だ。
四輪は初日トップのディフェンディングチャンピオン ♯101 の Natthaphon ANGRITTHANON / Peerapong SOMBUTWONG 組(The Land Transport Association of Thailand-Isuzu)いすゞ・D-MAX がこの日も最速タイムを記録。2位に13分差という圧倒的大差を付け、総合タイムでも2位に20分近くの差をつけ、二日目にして総合1位のポジションを盤石なものにしてしまった。
続く2位も昨日と同じ♯120 Suwat LIMJIRAPINYA / Prakai NAMJAITHAHAN 組(Isuzu Suphan Sport)いすゞ・D-MAX。こちらも安定的な速さでソツなくまとめ、中盤戦に向け、ナタポン選手のミスを伺う構え。
3位には昨日4位だった TOYOTA CROSS COUNTRY TEAM THAILAND の ♯105 Mana PORNSIRICHERD / Kittisak KLINCHAN 組のトヨタ・ハイラックスが入り、上位にプレッシャーをかけ続けているものの、同じチームの♯111 の Jaras JAENKAMOLKULCHAI / Chupong CHAIWAN 組は8位とやや順位を落とした。
そして昨日の5位からもうひとつ高い順位でゴールしたのが♯112の青木拓磨 / Itthiphon SIMARAKS / 椎根克彦 組(FORTUNER GEOLANDAR takuma-gp)のトヨタ・フォーチュナー。「後半25kmで120番のD-MAXに追いついたものの、埃がすごくて抜くことができなかったが、視界クリアで走れていればもっとタイムを縮められたはず(笑)」と鼻息も荒い。
その後ろは「昨日よりもプッシュして走った」というTEAM JAOS の ♯109 能戸知徳 / 田中一弘 組のトヨタ・ハイラックスが肉薄。市販ハイラックスとサスストロークの変わらぬオーバーフェンダーレスのスレンダーなマシンながら、なかなかのスピードでT1G(ガソリン)クラスの優勝を虎視眈々と狙っている。
続く6位は♯121の Chayapon YOTHA / Banphot AMPORNMAHA 組(Morseng Racing Team)のいすゞ・D-MAXだ。
なお、今大会では競技とは関係なくコンペティターの走るルートを純粋にオフローディングとして楽しむことのできる「アドベンチャー・チャレンジクラス」が設定されている。ここに韓国のチームを含む3台のマシンが参加しているが、そのうちの1台、インド製のクラシックカー Hindustan AMBASSADOR で参加している ♯65 横田正弘 / 大木悦子組 のことをここで少しご紹介しておこう。
実はドライバーの横田正弘 氏 は、群馬県にある「伊香保 おもちゃと人形 自動車博物館」の館長さん。1年ほど前のフェイスブックでサイドカーのウラルがこのラリーを走る姿を見て、興味を持って主催者に連絡してきたという。オンロード用の車だけにオフロードに足を踏み入れるのは憚られるが、実は主催の笹も「オフロード用の4WD車であるかどうかに関わらず、このラリーにツアーとして同行し、アジアの国境を越える楽しさを誰でも共有できるクラスの創設を考えており、ふたつ返事で当ラリーへの参加が実現した」、という経緯があった。
そしてこの2日間、主にサービスのルートを走破していた横田氏は、その経験を振り返って以下のようにコメントしている。
「いやほんとうに楽しくて(笑)。特にタイの郊外にいくと信号がないから、存分に走りを楽しめました。サービスエリアでコンペティターのクルマを見たり、ラリーの様子もよくわかって面白かったです。一番印象に残っているのは、参加者の皆さんが人間的にパワーのある人ばかりで、自分も気持ち的に若返ったことですね。特にオートバイとかサイドカーの皆さんとか、もう信じられないですよ。彼らは超人だと思います。本当に、楽しませてもらってますよ」
このアドベンチャークラス、来年以降も実施していく予定だ。興味のある方はぜひご連絡を!