Language JPN ENG
#12 Rong-Kuang Chen (OVERTAKE RALLY TEAM)
Vat Phou, Ceremonial Finish Point
Auto Overall 1st: #105 Takuma Aoki / Ittipon Simaraks/ Songwut Danphiphattrankoon (TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA)
Moto Overall
8月19日(土)晴れ、
パクセ → パクセ
総走行距離:151.77km リエゾン:99.81km SS:51.96km

LEG 6

四輪は車いすの青木拓磨選手(日本)が14回目の参戦にして悲願の初優勝を達成! 二輪は復帰初戦のジャクリット選手(タイ)が圧倒的な速さで王者奪還!

8月13日から19日にかけ、タイ王国〜ラオス人民民主共和国で行われた第28回アジアクロスカントリーラリーにて、TOYOTA GAZOO RACING INDONESIAチームのフォーチュナーで出場していた日本の青木拓磨選手が総合優勝を飾りました。

青木選手は世界的に有名なGPライダーでしたが、1998年の練習中の事故で下半身が付随になり、あらゆる競技から遠ざかっていました。

しかし2007年に四輪への転向とアジアクロスカントリーラリーへの参戦を発表。以来17年間、14回にわたって参戦し続けてきました。

今大会では3日目に総合首位に立つと、ラオスで行われた極悪路の後半戦でも危なげなく上位の走行を続け、11時間46分22秒のタイムで総合優勝を飾りました。

準優勝は同じ TOYOTA GAZOO RACING INDONESIAチーム からフォーチュナーで出場している#121 Tubagus Moerinsyahdi(インドネシア)/Jatuporn Burakitpachai(タイ)組、3位には昨年の覇者、三菱ラリーアートから新型トライトンで出場している #101 Chayapon Yotha(タイ)/Peerapong Sombutwong(タイ)が入りました。

MOTO部門では昨年は欠場していた Jakkrit Chawtale 選手が13時間24分46秒のタイムで王者奪還しました。

2位には昨年の覇者、Team Japan の 西村裕典 選手が、3位にはカンボジアの Koun Phandara 選手が入りました。

本日の暫定結果を反映したオーバーオールの成績は以下のとおり。詳しい競技内容は以下のデイリーレポートでお知らせいたします。

4年ぶりに “夏本番の一戦” としてフル日程、フルコースの本格開催で帰って来たアジアクロスカントリーラリー2023。長かった6日間の競技日程も今日で最終日を迎えました。

振り返ってみれば、前半は雨の少なさに驚かされ、後半は一転して川の増水に悩まされた大会でした。

タイ ステージでは雨が皆無と言って良く、路面は硬く、凹凸は激しく、アベレージスピードは高くなり、マシンと人の両方に負担が大きくなりました。

ところがラオスステージでは日没後のスコール等により川が増水してしまい、数多くのドラマが生まれるだろうと予想されていたハイライトの区間をキャンセルせざるを得なくなったのです。

もう少し、タイ側で多くの雨が、ラオス側で控えめな降雨になってくれていたら、主催者の想い描く “アジアクロスカントリーラリー”らしい戦いを作ることができと思いますが、これもまたラリーです。我々が天気をコントロールすることなど、もとよりできないことなのですから。ただ、改めてコース設定の難しさを実感した大会でもありました。

とはいえ、初日から続く尋常ならざる暑さと埃の中、厳しい路面と戦ってきた選手達にとって、今大会もきっと、一生涯忘れられない想い出となったに違いありません。

最終SSのゴールでは感極まって涙を見せる者、仲間同士抱き合って喜びを爆発させる者、パートナーとガッチリ握手をする者など、自らの限界を超えた長い戦いの終幕に、さまざまな感情を爆発させながら互いを褒め称える選手達の姿がありました。


そんな中、誰よりも速く、ひと際大きなガッツポーズでゴールに飛び込んで来た二輪の選手がいました。もうお分かりでしょう。KTM 500 EXC-F を駆る、#17 JC DIRT SHOP Rally Team の Jakkrit Chawtale 選手(タイ)です。

排気量251cc〜700ccの M2クラス から参戦した Jakkrit 選手は初日にトップに立つと2日目以降も後続との差を広げ、総合トップの座を一度も明け渡すことなく最終日を迎え、最終SSでも最速タイムを叩き出す王者の走りで6日間の戦いを締めくくりました。圧巻の走りです。


そして四輪は、両足が不自由なセミワークスチームの選手がワークス勢と互角に渡り合い、幾多のトラブルを超えて頂点に立つ! という誰もが予想し得なかったサプライズが起きました。

前日までの総合順位でスタートした 51.96kmの最終SS6を危なげなく走り、誰にも抜かれることなくゴールしてきたのは、TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA からフォーチュナーで出場していた #105番、青木拓磨選手(日本)/ Ittipon Simaraks選手(タイ)、Songwut Danphiphattrankoon(タイ)選手のマシンです。

実はこのマシン、初日からずっとトラブル続きでした。最初のSS1を走り始めて5分もしないうちにフロント右のドライブシャフトが壊れ、2WD状態に陥ります。この症状は応急修理後のSS1後半でも、翌実のSS2でも完治せず、まる2日間を2WDのまま戦うことを余儀なくされました。

でも逆に、2WDでも上位のタイムで戦えている事実に、チームは自信を深めます。そして4WDが問題なく使えるようになった3日目、TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA はデイリートップの 塙 郁夫(日本)選手/染宮弘和(日本)選手のフォーチュナーを筆頭に、デイリーのトップ3を独占し、ここで青木拓磨選手のマシンが総合トップに躍り出たのです。

その後は追いすがるライバルを尻目に、マシンを壊さないよう淡々と走る青木選手が大きく崩れることはなく、ラオスステージでも2位、3位と上位走行を続け、最終日は完全にペースを落として盤石のレース運びでゴールイン。初優勝、総合優勝、T1Dクラス優勝の栄冠を一度に手に入れることとなりました。


総合2位はチームメイトの #121 Tubagus Moerinsyahdi(インドネシア)/Jatuporn Burakitpachai(タイ)組。マシンの改造度合いは拓磨選手のマシンほど高くはありませんが、シルキーなエンジン特性はストップ&ゴーの多いアジアクロスカントリーラリーのステージによくマッチしており「速くは見えないけどタイムはいい」走りで青木選手の105号車を追走、最終SSではランデブー走行で同時にゴールしていました。

総合3位に付けたのは新型トライトンを駆る Team MITSUBISHI RALLIART の #101 Chayapon Yotha(タイ)/Peerapong Sombutwong(タイ)組です。昨年、いきなり総合優勝を飾ったドライバーの Chayapon 選手は35歳ながらミスが少なく、クレバーでソツのない走りが身上。

マシンを壊さず、速く、正確に操り、常に無傷でゴールに帰ってくるスタイルはラリーの現場で何よりも大切となる資質です。今回の戦いで優勝がフロックではなく実力であったことを見事に証明してみせました。

鳴り物入りで登場した三菱トライトンのラリーマシンもマイナートラブルはあったものの初年度からコンスタントに速く、今後はアジア圏のクロスカントリーラリーシーンを「数」で席巻しているトヨタのハイラックス レボ勢やいすゞのD-MAXに対し、どのようなアプローチで戦っていくのかが注目されることになるでしょう。


なお、TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA チームを率いる PT.TCD ASIA PACIFIC INDONESIA の President Director 小原敏夫氏 は「2017年から4回、トヨタ フォーチュナーでこのラリーにチャレンジして来ました。我々は開発者ですのでレースの結果にだけフォーカスした活動をしているわけではありません。ただ、皆で一所懸命に挑戦する中で、今回のようなサプライズが訪れたことに対しては、本当に嬉しいことだと感じています。この結果は、青木拓磨 選手や Tubagus 選手を始め、優秀なドライバーやコドライバーの活躍がもたらしてくれたことは言うまでもありませんが、インドネシア、タイ、日本という3か国のメカニックが集まってチームを支えてくれたことを本当に誇りに思っています。こういった活動を通じて、我々は今後もトヨタ車の魅力と強さをお客さまにお伝えして行きます。どうかこれからもご声援よろしくお願いいたします」とコメントしてました。


Team MITSUBISHI RALLIART の 増岡 浩監督は「悔しさはありますが、3台を出場させ、全車をゴールまでしっかり導くことができたことを誇りに思っています。そして、新型トライトンの信頼性をみなさんに知っていただけるいい機会になったと考えています。このラリーへの参戦は2年目になりますが、我々はクルマ造りのためのいろんな基礎データを収集すること、そしてこのプロジェクトに関わるエンジニアを育てる、ということを大きな目標としています。そしてこうした厳しい条件の中で得たノウハウを量産車に活かし、世界の沢山のお客さまにお届けする、という意味で、こうしたラリー活動は我々にとって非常に大切なものだと考えています。来年はさらにチームを強化し、今回得られたノウハウでさらに磨きをかけて、優勝目指してがんばりたいと思います」とコメントしていました。

SSの後、50kmのロードセクションを経て選手達が辿り着いたのはラオスが誇る世界遺産「ワット・プー」です。ここでセレモニアルフィニッシュが行われ、最終成績の順に並べられたバイクや四輪のマシンが紹介を受けながら1台、また1台とポディウムのゲートを通過していきました。

その間は選手はもちろん、縁の下でチームを支えていたサービスのメカニックや関係者らがマシンの前に集まり、歓喜の声を上げながら、幾度も幾度も「記念撮影」に興じます。この時はもう、敵も味方もない「ノーサイド」。互いに喜びを分かち合いながら、完走を称え合い、アジアクロスカントリーラリー恒例のお祭り行事は夕暮れの風がほんの少し? 涼しくなるまで続きました。


そして、ラリーのサーカスをタイ国内から共に移動してきた全車両がパクセの Campasak Grand Hotel に到着した後、大きな広間でディナーパーティが行われました。その席で、二輪、サイドカー、四輪の総合成績による表彰が行われたほか、クラス別のアワード、チーム賞、特別賞など、数多くの表彰が行われました。また、これに先立ち、ウルトジャパンより最終SS6の四輪車に設定されていた「ウルト・アワード」の表彰も行われましたので、併せてご報告いたします。

【最終SS6:ウルトアワード(四輪)】※SS6上位3台
優勝:#111 TOYOTA GAZOO RACING THAILAND Mana Pornsiricherd / Kittisak Klinchan(トヨタ ハイラックス レボ)
2位:#102 TOYOTA GAZOO RACING THAILAND Jaras Jaengkamolkulchai / Sinopong Trairat(トヨタ ハイラックス レボ)
3位:#120 SRS-OSAKA-WELPORT RALLY TEAM 杉本 哲也 / 青木 孝次(三菱 パジェロ スポーツ)

【MOTO 総合】
優勝:#17 JC DIRT SHOP Rally Team Jakkrit Chawtale(KTM 500 EXC-F)
2位:#1 Team Japan 西村 裕典(HUSQVARNA TE250i)
3位:#2 Team CAMBODIA Koun Phandara(KTM 450EXCF)
4位:#16 Team CAMBODIA Chhour Chan Sovan(KTM 350EXCF)
5位:#15 Team OTOKONAKI 砂川 保史(KTM EXC 350-F)
6位:#20 Team OTOKONAKI 高橋 祥介(HUSQVARNA FE350)
【MOTO M1クラス】
優勝:#1 Team Japan 西村 裕典(HUSQVARNA TE250i)
2位:#2 PERTAMINA Enduro Rally Team Mufti Muis Karim(HONDA CRF250 Rally)
3位:#18 VIETNAM RALLY TEAM MANH HUNG TRAN(KAWASAKI KLX 250)
【MOTO M2クラス】
優勝:#17 JC DIRT SHOP Rally Team Jakkrit Chawtale(KTM 500 EXC-F)
2位:#2 Team CAMBODIA Koun Phandara(KTM 450EXCF)
3位:#16 Team CAMBODIA Chhour Chan Sovan(KTM 350EXCF)
4位:#15 Team OTOKONAKI 砂川 保史(KTM EXC 350-F)
5位:#20 Team OTOKONAKI 高橋 祥介(HUSQVARNA FE350)
6位:#3 Team OTOKONAKI 松本 典久(KTM EXC 350-F)

【サイドカー 総合】
優勝:#66 Rising Sun Racing with JRSA 渡辺 正人 / 大関 政広(URAL GEAR UP)
【AUTO 総合】
優勝:#105 TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA 青木 拓磨 / Ittipon Simaraks / Songwut Danphiphattrankoon(トヨタ フォーチュナー)
2位:#121 TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA Tubagus Moerinsyahdi / Jatuporn Burakitpachai(トヨタ フォーチュナー)
3位:#101 Team MITSUBISHI RALLIART Chayapon Yotha / Peerapong Sombutwong(三菱 トライトン)
4位:#130 Pointer Team Raz Yehoshua Heymann / Hillel Segal(三菱 シーガル)
5位:#123 NEXZTER REST CLUB (NXRC) Pittiphon Promchotikul / Charin Harnsungnoen(トヨタ ハイラックス レボ)
6位:#111 TOYOTA GAZOO RACING THAILAND Mana Pornsiricherd / Kittisak Klinchan(トヨタ ハイラックス レボ)
【AUTO T1D】
優勝:#105 TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA 青木 拓磨 / Ittipon Simaraks / Songwut Danphiphattrankoon(トヨタ フォーチュナー)
2位:#121 TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA Tubagus Moerinsyahdi / Jatuporn Burakitpachai(トヨタ フォーチュナー)
3位:#101 Team MITSUBISHI RALLIART Chayapon Yotha / Peerapong Sombutwong(三菱 トライトン)
4位:#130 Pointer Team Raz Yehoshua Heymann / Hillel Segal(三菱 シーガル)
5位:#123 NEXZTER REST CLUB (NXRC) Pittiphon Promchotikul / Charin Harnsungnoen(トヨタ ハイラックス レボ)
6位:#111 TOYOTA GAZOO RACING THAILAND Mana Pornsiricherd / Kittisak Klinchan(トヨタ ハイラックス レボ)
7位:#112 Team MITSUBISHI RALLIART 田口 勝彦 / 保井 隆宏(三菱 トライトン)
8位:#115 Isuzu Suphan Explorer Liqui Moly Rally Team Ditsapong Maneein / Athikij Srimongkhol(いすゞ D-Max)
9位:#135 Würth TRD Hilux MSB Tras 135 新田 正直 / 里中 謙太(トヨタ ハイラックス レボ)
10位:#108 NEXZTER REST CLUB (NXRC) Theerapong Pimpawat / Jumpol DOUNGTHIP(トヨタ ハイラックス レボ)
【T2A-ディーゼルクラス】
優勝:#129 Isuzu Suphan Explorer Liqui Moly Rally Team Thongchai Klinkate / Banpoth Ampornmaha(いすゞ D-Max)
2位:#137 IDEMITSU IM Team Veerachai Thorangkoon / Wuttichai Thritara(いすゞ D-Max)
3位:#114 Siam Prototype TEA Siam / Auttakoon Kojohnvisan / Kirati PinPathomn(トヨタ ハイラックス レボ)
【T2Dクラス】
優勝:#140 SRS-OSAKA-WELPORT RALLY TEAM 山崎 元彰 / 浅井 道浩(いすゞ D-Max)
【T1Gクラス】
優勝:#122 INDONESIA CROSS COUNTRY RALLY TEAM Harianto Memen / Phophipad Chonlanat / Buchari Rimhalsyah(トヨタ ハイラックス)
2位:#128 Garage Monchi & Yanagawa iron works JAPIND 竹野 悟史 / 柳川 直之(スズキ ジムニー)

【スペシャルアワード】
#119 FAST FORWARD SPORT Sanjay Takale / Thanyaphat Meenil(トヨタ ハイラックス レボ)
#118 AKA Racing Quang Tien Tran / Tien Lam Nguyen(三菱 トライトン)
#117 VKH Racing Team Heng Panha / VONG Kimhuot(トヨタ タコマ)
#110 Isuzu Suphan Explorer Liqui Moly Rally Team Suwat Limjirapinya / Prakob Chaothale(いすゞ D-Max)
#124 FEELIQ INNOVATION MOTORSPORT Michael FREEMAN / Chaiya CHOMMALEE(フォード ラプター)
【アプリシエイト】
・アジアンラリー フレンドシップ アソシエイション
・台湾 Looking Technology Co., Ltd.
・中央自動車大学校
・WELPORT Corporation, Ltd.
・PROPAK
【MOTO チーム賞】
優勝:OVERTAKE RALLY TEAM
【AUTO チーム賞】
優勝:Team MITSUBISHI RALLIART
2位:Isuzu Suphan Explorer Liqui Moly Rally Team
3位:VIETNAM(AKA Racing, STEELMATE RACING)
4位:SRS-OSAKA-WELPORT RALLY TEAM
5位:TOYOTA GAZOO RACING THAILAND
【AUTO チーム賞】
優勝:Team MITSUBISHI RALLIART
2位:Isuzu Suphan Explorer Liqui Moly Rally Team
3位:VIETNAM(AKA Racing, STEELMATE RACING)
4位:SRS-OSAKA-WELPORT RALLY TEAM
5位:TOYOTA GAZOO RACING THAILAND
【Ladies 賞】
優勝:#142 i TAIWAN RALLY TEAM Yi Wen Chen / Priscila Cristina Chen Hsu / Ya Ting Li(トヨタ ハイラックス レボ)
2位:#133 INDONESIA CROSS COUNTRY RALLY TEAM Lody Natasha / Dameria Yusi Prasasti(いすゞ D-Max)

最後になりますが、この表彰式の合間に、クルマ椅子のドライバー 青木 拓磨 選手より ●●●●●●に向け、クルマ椅子の贈呈式がございましたので、ここにご報告させていただきます。


長いようで短かった2023年のアジアクロスカントリーラリーもこれにて閉幕です。残念ながらこのオフィシャルレポートでは、上位を獲得したごく僅かな選手やチームしかご紹介することが叶いませんでしたが、参加者全ての皆さんに異なるストーリーがあり、それぞれに、ここでご紹介しきれない「熱い想い」があるのです。

どうかみなさん、以下のFacebookやインスタグラムにをご覧ください。そこには今大会を彩ったさまざまな出来事や想いが詰め込まれており、玉手箱の中の宝石のように光輝いて見えることでしょう。

■Facebook(Asia Cross Country Rally)
https://www.facebook.com/AsiaCrossCountryRally
■Instagram(Asia Cross Country Rally)
https://www.instagram.com/asiacrosscountryrally/

さてそれではみなさん、そろそろお別れの時間です。
 また来年、この場できっと、お会いしましょう!

(写真/高橋 学、文/河村 大)

異国の環境とラリーの現場の厳しさを
体で学ぶ中央自動車大学校の生徒たち

このラリーでは毎年、日本の自動車整備の専門学校の学生達が現場を学びに来ています。千葉県にある中央自動車大学校(CTS)の4年生達です。今年は TOYOTA GAZOO Racing INDONESIA の青木拓磨選手のマシンと塙 郁夫選手のマシンの整備を4人で担当していました。

もともと中央自動車大学校には「アジアクロスカントリーラリーに行ってみたい!」という気持ちで入学して来る生徒が多くいますが、その中でも特に4年間前向きにがんばって来た学生達が選抜され、チームと一緒に国際ラリーの現場へ送り出しています。

また、青木拓磨選手のマシンは例年、ラリーの後に中央自動車大学校に運び込まれ、不具合をチェックするためにバラされ、フレームとボディーを分離させ、不具合があるところは直しながら、ひとつずつキレイに組立直されていますが、実はこの作業も学生達が行っているのです。

学生達を現場に連れてくる意義を小谷秀則先生に伺うと、「国際ラリーの現場に来て、いろんな国の人達と接点を持ちながら、さまざまな考え方や文化があることを理解して行って欲しいですね。また、クルマが過酷な環境の中でどういう変化をして故障していくのか。ラリーというカテゴリーの中で、勝つためにはどのようなサポートしたらいいのか、そこを学んで行って欲しいです。そして、みんなの力が合わさった時に結果が付いてくる、という競技の醍醐味も味わってもらいたいですね」とのことでした。

今年の優勝マシンを陰で支え続けてきた中央自動車大学校の生徒達。この素晴らしい結果にはきっと、彼らも鼻高々だったのではないでしょうか。また来年も、彼らの活躍に期待しましょう。

(写真/高橋 学・芳澤直樹、文/河村 大)
(写真提供/中央自動車大学校 小谷秀則先生)

MOTO

最終日になって得られるものの価値を再認識する、挑戦している自分が楽しいアジアンラリーの魅力

ややのんびりとした時間に出発となるアジアンラリー最終日の朝、MOTOクラスはホテルを8時30分にスタート。撮影班はその1時間前にホテルを経ち、ショート設定(約50km)のSS6をフィニッシュ地点から逆走する形でコマ図を読み進め、ここぞという場所ですべてのライダーを撮る作戦に出た。

するといきなり、コンクリートで整地された「水を渡る道」に出くわし、ここもなかなか映えるポイント。しかしそう考えるのはどのメディアも同じなので、なるべく多くのシーン、コンペティターの記録を残すならもっと奥へ行くべきだと、いつものように突き進んでしまうのは性分だろう。

適度なアップダウンと蛇行する赤土の生活道路をたどって集落の中を進む。道の両脇には民家が並び、犬やニワトリ、牛、ヤギなどが人間の生活の中で当たり前のように闊歩している。集落と集落の間には激しくえぐられた路面が必ずと言って良いほど現れ、そんなこんなを越えてさらに先へ。

この日は昨日の「水っぽさ」はまったく感じられず、地面は締まり、土埃は舞い、空は青く絵に描いたようなこんもりとした白い雲が浮かぶ。路面もまた様々だが、昨日のようなちゅるちゅるはほとんど無い。

コマ図を逆読みしながらたどり着いたのは、岩盤が剥き出しの浅い川。水量はお世辞にも川とは言えないほどチョロチョロとした流れで、本来であれば川底にあるはずの無数の大きな平たい岩が太陽光に焼かれ、黒ずんでいる。

やはり、自分の足で確かめないとこういった地形、光景には出会えないもので、改めてルートブック(コマ図)を見ても「RIVER」や「ROCK」のマークは無かった。

ということで、ここで作戦決行。

SS区間の距離が短いのでトップのライダーがやってきたらあとは早い。別の場所を探して移動していたら、その間に20台のバイクが走り去ってしまう。それはライダーにとっても同じ事らしく、何かしらトラブルでストップした場合、リカバリーのためにかかった時間は区間距離が長いセクションよりも割が悪い。そのため、この日は“そつなく”完走することが重要なのだとか。

そんなときに限ってパンクするライダーもいるから可笑しなもの。聞けば自分史上最速のチューブ交換で、手押しの空気入れは過去最高の速さでポンピングしたとか。停まっている時間が長いほど後続に迫られ、区間距離が短ければ巻き返しが難しい。

大会期間中、ほぼトップライダーの後姿を見てきたライダーに言わせると、彼らは自国の道に慣れているだけでなく、マシンのセッティングも実にこの大地にマッチしたものだということに気付いたらしい。こればっかりは日本ではできない。そのシチュエーションで走りこまなければチューニングのしようがない。

また、結果としては上位だったものの、アジアンラリーを経験した数が自分より多いライダーから教わることもあるなど、ここでは実戦で得られることが多くて楽しいと言う。

初参戦ながら上位クラスに名を連ねたライダーに聞くと、なにより「日本にはない道が楽しい」と言う。「こんなに長くアクセル全開できるダートなんて、日本じゃあり得ないじゃないですか」と、笑う。そして「一般道でこんなに酷い道は日本じゃ絶対に無いですよね」とも。

アジアンラリーには複数回の参戦経験があり、今年は初日に転倒、鎖骨骨折でリタイアしたライダーは、その後も関係車両に便乗してラリーに帯同しながら、もうアジアンラリーはこりごりだと考えていたらしいが、最終日を迎え、また来年を楽しみにしている自分に気付いたらしい。

目の前の道に挑戦することが楽しい。それが実践できるアジアンラリーでは得られるものが多く、ひどい目に遭いながらも、また次回を期待してしまう。それがアジアンラリーの大きな魅力のひとつなのかもしれない。

(写真・文/田中善介)
Provisional Result Leg6
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MOTO, SIDECAR
Official Result Leg1-6
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