8月11日(日)スラータニ
夜の時計台の下で行われた
熱狂のセレモニアルスタート
国際自動車連盟(FIA)公認の国際ラリー「アジアクロスカントリーラリー(AXCR)」がタイ南部の州都「スラータニ」にて開幕した。
日没前に ダイヤモンドプラザホテル を出発したラリーマシンは総勢67台。警察車両が先導する中、19台の二輪と2台のサイドカー、そして46台の四輪が長蛇の列でコンボイを組み、一路ターピー川河畔の時計台へと走り出した。
セレモニアルスタートの開会は19時半。スラータニ県の副知事や市長、商工会議所の会長や警察副長官が見守る中、昨年の覇者、青木拓磨選手(日本)からスラタニの病院に車椅子が寄贈されたほか、ムエタイとその儀式「ワイクルー」が行われ、時計台の周りは数多くの市民と観光客で賑わった。
そして二輪の選手がスタート台に並ぶと大きな拍手が沸き起こり、選手達は大きな声援を受けながら1台、また1台とスタートを切っていった。
セレモニアルスタートの興奮が最高潮に達したのは4輪トップチームのスタートの時。クルマの上で握手するドライバーとコドライバーはもちろん、チーム監督やサービスクルー、チームクルーにその家族や関係者が加わり、大声を上げながら拳を振り上げ始めると、その熱気に応じるように観客から大きな声援が送られていた。
今年の競技はは8月11日から17日まで。セレモニアルスタートを入れると7日間の行程だ。競技は明日8月12日月曜日から本格的に始まり、初日はスラータニ郊外のラフロードを巡るループコース。2日目には王室の夏の宮殿がある海辺のリゾート地「ホアヒン」を目指して北上し、そこで2泊してLEG3までの戦いを消化。4日目も競技を行いながら北へ移動してカンチャナブリを目指し、競技5日目と6日目は異なるループコースで戦いが行われ、そのままカンチャナブリの街でゴールを迎える予定だ。
コースの総延長は約2,077km。このうち、定められた時間内に公道を移動するロードセクション(リエゾン)は約1,136km、タイム計測を行い、速さを競うスペシャルステージが約941kmとなってる。
多種多様な人種と国、マシンが集まった
今年のAXCRは競技車両が67台、これを支えるサービスカーやサービストラック、メディアカーなどを加えると実に230台以上、600人近い陣容。エントラントの国籍もインド、インドネシア、オーストラリア、カンボジア、シンガポール、タイ、台湾、日本、ベトナム、マレーシアなど10カ国にのぼっている。
四輪はタイ国内のオフロードレースでも人気が高いピックアップトラックが圧倒的に多く、トヨタ ハイラックスが13台、いすゞ D-Maxが12台、三菱トライトンが5台、フォード ラプターが2台、トヨタ タコマが2台と、全ラリーマシンの¾がピックアップ勢。そのほかトヨタ フォーチュナー、ランドクルーザーが80系、150系プラド、200系、300系と4種類のモデルが参加、スズキ ジムニーも3台がエントリーしている。
クラス別に見ると、例年総合優勝を争っている改造クロスカントリー車両のT1D(ディーゼル)クラスが27台ともっとも多く、同じくT1G(ガソリン)が9台、T2A(ディーゼル)が8台、量産クロスカントリー車両のT2Dクラスが1台、そして台湾からは常連の CHEN, Ho-Huang 選手がAXCR初となるEV車両(T1E)でラリーマシンを製作、エントリーしている。
なお、日本から参戦している「Kyushudanji Team Japan」のトヨタ ランドクルーザー80は製造以来30年を経た車両で、本ラリー最高齢のマシンとなっているが、その完成度は高い。ハチマルファンはぜひその活躍に期待して欲しい。
いすゞ、トヨタ、三菱の三つ巴の戦い
昨年T1Dクラスで総合優勝した TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA の 青木拓磨選手 は今年も同じ トヨタ フォーチュナー での参戦ながら参戦クラスはT2A。より市販車に近いモデルで2連覇を目指している。なお昨年総合2位の Tubagus Adhi MOERINSYAHDI 選手は引き続きT1Dでの参戦だ。
2022年にデビューウィンを飾った「Team MITSUBISHI RALLIART」は昨年、新型トライトンを投入するも総合3位でラリーを終えていたが、今年はさらに1台増やして4台体制で参戦。主要マシンのトレッドを90mm拡大し、競技専用のシーケンシャル ミッション(マニュアルシフト)を採用したほか、リアサスペンションをリーフスプリングから4リンクのコイルスプリングに変更することで路面追従性を向上、ボンネットやフェンダー、荷台をCFRP化することでさらなる軽量化を果たし、総合優勝を全力で奪いに来た。
一方、念願の初優勝を目指す TOYOTA GAZOO RACING THAILAND は ハイラックス レボ 3台の体制。三菱勢より早くからリアサスペンションを4リンク+コイルスプリング化していたがミッションは市販のまま。長年参戦してきたAXCRで培ったオートマチックトランスミッションの技術には自信があり、実際に昨年末から生産しているハイラックス レボ の GRモデル に技術還元して実装することで「ユーザーの利便性とモータースポーツへの間口を広げていきたい」としている。
あらゆる手を尽くしてがむしゃらに総合優勝の奪還を狙う三菱勢と、モータースポーツの間口の拡大を狙って淡々と初優勝をトヨタ勢。そして、これらワークスチームの間隙を縫って虎視眈々と勝利を狙うセミワークスの 青木拓磨選手 のフォーチュナーと、ISUZU SUPHAN EXPLORER LIQUI MOLY RALLY TEAM のD-MAX。今年もやはり、タイ生産の日本製 ピックアップ & SUV 同士の戦いに目が離せないようだ。
AXCR第一日目のレポートをお楽しみに!