Event Logo

Race Report

  • Before the Race
  • DAY 0
  • LEG1
  • LEG2
  • LEG3
  • LEG4
  • LEG5
  • LEG6
LEG5
LEG5
LEG5
LEG5
LEG5
LEG5
8月16日(金)カンチャナブリ

チーム三菱ラリーアートのチャヤポン選手がストップ
トヨタ ガズーレーシング タイランド のマナ選手が念願の初優勝に王手をかける

この日、今大会最長のSSを迎えた。その距離、約230km。MAXタイムも6時間とやはり最長を誇っている。ただし、序盤約50kmはSS4で使われたコースと全く同じ。コマ図も同じものが使われた。コースは変わらずドライで渡河を含む特筆すべき難所もなく、一見すると選手達に優しいコースに見えた。

だが、同じコースでも躊躇無く採り入れた主催者の姿勢に、コースメイクの意図が透けて見えていた。この日は「距離」がキーワードだったのだ。

終盤戦に入り、人もマシンも疲れが溜まっているところに、サービスの手が及ばぬ長い距離を、選手とそのマシンだけで走らせる。それが最大の目的だ。

もちろんこの日も、SSの中間地点でサービスによる整備を受けることはできた。ただ、実際には15分程度の限られた時間しかなく、その間にできる作業はタイヤ交換やホイールナットのトルクの確認、給油、フロントウィンドウ、灯火周りの拭き取りなど、ごく限られたものだ。

もちろん、230kmもあれば、開いていたライバルとの差を一気に縮めることも可能だ。例年、最終日のSSは短いため、守るほうも攻めるほうも、ここが最後の踏ん張りどころになる。

この長いSSをいかに速く正確に、ミスコースなく、そしてトラブルなく走り抜けることができるか? 一瞬たりとも気の抜けない230kmが始まった。

松本選手が2番手を大きく引き離してゴール!

二輪は5日目も日本の Team OTOKONAKI 同士のトップ争いとなった。この日は KTM 250EXC-TPI を駆り、2番手からスタートした ♯2 松本典久 選手が2番手を大きく引き離す5時間5分12秒でゴール。昨日総合トップに立った ♯3 山田伸一 選手 を4分ほどの僅差で追いかけていたが、これを逆転。44分近いリードを奪って優勝に王手をかけた。

Husqvarna FE450 を駆る ♯3 山田伸一 選手 は5時間56分24秒で2番手のタイム。総合2位となったものの、最終日の逆転に望みを繋いでいる。

デイリー3位となったのは ♯11 KTM 350 EXCF を駆る Indonesia Cross Country Rally Team の Rudy POA選手(インドネシア)。総合成績でも前日来の4位をキープしている。

そして4位に入ったのは AXCR二輪選手随一の元気印、♯7 ORANGE FACTORY / BERIK の 小野拓哉選手。この日は2輪選手のデイリートップ5に AXCR のスポンサー「PROPAK」のアワードがかけられていたが「アワードは参戦以来初めての受賞」とのことで、壇上でひときわ嬉しそうな笑顔を見せていた。これにより、小野選手は総合でも14位から8位にジャンプアップしている。

5位は ホンダ CRF250 RALLYを駆る ♯9 PASAMAN SATU RALLY TEAM の Habib FADHLURROHMAN 選手(インドネシア)。6位は Husqvarna FE350 の ♯6 Team JAPAN の 勝俣 豪 選手、そしてなんと7位に ホンダ Super Cub90 で奮闘中の 後藤大輝 選手がつけている。

後藤選手は「人間は大丈夫ですが、スーパーカブのメインフレームが曲がり始めていて、段差や穴は極力ゆっくり走らせています。このままなんとかゴールまで持たせたいです」と語っていた。


衝撃のエンジントラブルと驚愕のチームオーダー

四輪は今大会最長を誇る230kmのSSの、最後の最後で大番狂わせが起きた。前日までトップを独走していた ♯103 Team MITSUBISHI RALLIART の Chayapon YOTHA(タイ)/ Peerapong SOMBUTWONG(タイ)組の 三菱 トライトン がエンジントラブルにより、ゴール手前2kmの地点で止まってしまったのだ。

Chayapon 選手は前日まで2位に19分差という大きなリードタイムを得て首位を独走、2度目の優勝をほぼ手中に収めていた感があった。それだけにチーム関係者やファンのショックは計り知れない。

結局 Chayapon 選手 は自力でゴールできず、サポートの役割を担って走っていた ♯137 小出一登 選手の 三菱トライトンがゴールまで牽引したものの3時間のペナルティが加算され、首位争いから大きく後退することとなった。総合成績はトップから約4時間25分遅れの20位である。

この結果を受け、総合トップに躍り出たのが ♯105 TOYOTA GAZOO RACING THAILAND の Mana PORNSIRICHERD(タイ)/ Kittisak KLINCHAN(タイ)組の トヨタ ハイラックスだ。

Mana 選手は初日トップに立ったあと、2日目にやや大きなミスコースを犯し、トップから約23分遅れてしまっていたが、3日目は3位、4日目は首位と、常に勝負を諦めず、全力で食らいついていた。その成果が5日目にして実を結んだのだ。

実はこの日、TOYOTA GAZOO RACING THAILAND のチーム内ではもうひとつ信じられないことが起きていた。

この日のSSを、同チームの ♯114 Natthaphon 選手が鬼神の走りでトップを快走していたにもかかわらず、ゴール手前約50kmで突然ストップ。後を走っていた Mana 選手の通過を待って、その後からゴールしたのだ。

実はこれ、TOYOTA GAZOO RACING THAILAND が Natthaphon 選手 に与えたチームオーダー。総合2位を走る Mana 選手 のゴールを確実にするために行った措置だ。

Natthaphon 選手は初日に7時間のペナルティを受け、既に優勝戦線から脱落していたとはいえ、AXCRで最多優勝の経験を持つ誇り高きレジェンドだ。その Natthaphon 選手 にすらオーダーを出すチームと、それに従った Natthaphon 選手。TOYOTA GAZOO RACING THAILAND がいかに勝利を渇望し、最後まで勝負を諦めずに戦っているのか、推し量ることができる。

それもそのはず、TOYOTA GAZOO RACING THAILAND は今年で8年目、7回目の参戦ながら、まだ1度も勝負の美酒を味わったことがないからだ。その執念が、明日のLEG6で実るのか否か。でも、勝負は最後まで分からない。特にこのアジアクロスカントリーラリーでは。

では、2位以下の総合順位を見ていこう。2位は ♯112 ISUZU SUPHAN EXPLORER LIQUI MOLY RALLY TEAM の Suwat LIMJIRAPINYA (タイ)/ Prakob CHAOTHALE(タイ)組の いすゞ D-MAX だ。

Suwat選手はこれまで一発の速さに優れてはいたもののマシンを最後まで持たせることができず、苦杯をなめていた印象があったが、今年はその走りに安定感が加わり、常に総合リザルトの上位に居続けるようになっている。

そして3位も同じ ISUZU SUPHAN EXPLORER LIQUI MOLY RALLY TEAM の ♯106 Thongchai KLINKATE(タイ)/ Banpoth AMPORNMAHA(タイ)組の いすゞ D-MAX だ。市販車無改造部門のT2A-Dクラスながら、今大会は安定して上位をキープしている。

4位は ♯115 TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA の 塙 郁夫 / 染宮弘和 組の トヨタ フォーチュナー。4日目のトラブルの影響でこの日は21番手スタートとなったが、前を走るマシンをゴボウ抜きしてなんとデイリー3位の成績を獲得、総合でも7位から4位にジャンプアップしてきた。

そして5位は ♯107 Team MITSUBISHI RALLIART の 田口勝彦 / 保井 隆宏 組の 三菱 トライトン。首位との差1時間を、明日の短いSSで埋めるのはやや難しいと思われるが、3年目の優勝を狙う三菱ラリーアートチームの首位につけている。

総合6位は ♯124 Mamba racing shock の Olan SORNSIRIRAT(タイ)/ Somkiat NOYCHAT(タイ)組の いすゞ D-MAX。こちらも T2A-D クラスながらよく健闘している。

そして昨年の覇者 ♯101 TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA の 青木拓磨 / Ittipon SIMARAKS(タイ)/ Songwut DANPHIPHATTRAKOON(タイ)組は現在総合7位。この位置から T2A-D クラスの優勝を虎視眈々と狙っている。

なお、夕食の会場では大会スポンサーの「PROPAK」から上位5台に対してアワードの授賞式があり、1位のMana 選手、2位のNatthaphon 選手、3位の塙選手、4位のSuwat 選手、5位の Thongchai 選手が賞金を渡されている。

さあ明日はいよいよ最終日、2024年のアジアクロスカントリーラリーもいよいよゴールの時を迎える。

果たして TOYOTA GAZOO RACING THAILAND は悲願の初優勝を飾ることができるのか? あるいはもうひと波乱あって ISUZU SUPHAN EXPLORER LIQUI MOLY RALLY TEAM がトップに立つのか? はたまた TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA が2年連続して勝利の美酒に酔うことができるのか…。勝負の行方は本当に最後の最後までわからない。

明日のレポートをお楽しみに!

(写真/高橋 学・芳澤直樹、文/河村 大)

2024年のタイヤ・ウォーズ

ここで4輪のタイヤにフォーカスしてみよう。今年も熾烈なタイヤ戦争が展開されていたが、出場46台中19台、装着率41%と、断トツで多かったのが 横浜ゴム の GEOLANDAR だ。特にチーム三菱ラリーアートでは参戦した4台のトライトンのほか、サービスカーの デリカD:5 や アウトランダー、デリカミニ に至るまで、ほぼ全ての車に GEOLANDAR が装着されていたのが印象的だった。前年のチャンピオンチーム TOYOTA GAZOO RACING INDONESIA も同じタイヤを選んでいる。次点は装着台数6台(13%)で、 住友ゴム工業(DUNLOP)の GRANDTREK と TOYO TIRE の OPEN COUNTRY 、そして ミシュラン の BFGoodrich の3銘柄が同率で並んだ。興味深かったのは DUNLOP のタイヤだ。TOYOTA GAZOO RACING THAILAND の Mana 選手らは市販されていないプロトタイプ(AXCR special)を昨年から継続してテスト。「今年はより強く耐久力のあるタイヤに変更している」とのことで、このまま Mana 選手が優勝すれば、製品化に弾みがつくかも知れない。なお、TOYO の OPEN COUNTRY は ISUZU SUPHAN EXPLORER LIQUI MOLY RALLY TEAM の3台が採用していた。その次に多かったのは中国の WEST LAKE 。そのほか、マレーシアの ARIVO、日本の BRIDGESTONE、インドネシアの DELIUM、韓国の KUMUHO、台湾の MAXXISなどが1台ずつ確認されている。サイズ的に優勢だったのは、D-MAX勢のほとんどが装着していたLT235/85R16。次いでハイラックスでの採用が多かったLT235/80R17、そしてトライトンやフォーチュナーで多かったLT245/75R17だ。なお、最も小さなタイヤを履いていたのはジムニー勢。195R16Cの外径は約733mmだ。そして最も大きなタイヤを履いていたのはフォードのラプター勢。LT285/75R17の外径は860mmに及んでいる。

世界に1台。学生達が作ったラリーマシン

♯136 Asian Rally team の スズキ・ジムニー シエラは日本の中央自動車大学校(CTS)の学生達が製作したクルマだ。日本で自動車整備士の資格を得るには国家試験に合格する必要があるが、その中で最もレベルが高い「一級」自動車整備士を目指して勉強している学生達に対し、CTSでは例年、ラリーマシンの整備や製作、競技中のサービス体験などを卒業前のスペシャルプログラムとして提供している。

プロジェクトリーダーの小谷秀則先生に話を伺うと「まず、過酷な競技の場で走らせるにはどんなことに気を付けなければならないのか、想像力を働かせながら作業することができます。そして競技の現場では自分が担当した所は上手く働いたのか壊れたのか、そのフィードバックが得られますし、限られた時間や道具、部品の中でどう修理すればいいのか、そういった生の体験も得られます。これは、車社会の将来を担う彼らにとって、とても大切なことだと思っています」とのこと。実際にジムニーの改造/製作に携わった20名近い学生から3名を選抜して引率、サービススタッフとして日々の整備を行っている。

なお、元車のジムニーは直進安定性を良くするためにフレームとボディーを切り離して30cmストレッチ。後席を外した上で車室を短く成形し、後は屋根のないピックアップスタイルとすることで軽量化を果たし、ラリー中のタイヤ交換等も容易にしている。今年の学生達はかなり手の込んだ改造を行ってきたのだ。

ドライバーは台湾の女優 Roslyn SHEN 選手(台湾)。コドライバーの Nada SIMARAKS 選手(17才/タイ)は今大会最年少ということもあり、ふたりの挑戦はスタート時から多くの注目を集めている。4日目にはロックのヒルクライムで転倒、フロントガラスを失ってしまったがなんとかゴール。学生達の修理によって5日目もリタイアは免れ、最終日はまた元気な姿を見せてくれる予定だ。

(写真/高橋 学・芳澤直樹・CTS提供、文/河村 大)

Moto

ラリー競技とツーリズム、最後まで生き残ってナンボの世界

大会5日目は、出発地点と目的地(ホテル)が同じループ状のコース設定で、参加者たちは朝早くから走り出す準備を整えつつもどこか余裕が感じられる。移動のための荷造りやパドックの撤収、ラリーにかかわる荷物の搬送の段取りが無いだけでも、気分的にだいぶラクだ。Motoクラス(二輪)の参加者は、Auto(四輪)と違って整備はもとよりパドックの設営など、すべてを自分たちで行なう。

この日は連日のスコールも無く、ただひたすら暑く、湿度も高く、相変わらず殺人的な陽射しが降り注ぐ中、大地をなでるように吹くそこはかとない涼しい風が心地よさを感じさせる。これは日本と大きく異なる点だ。

未舗装路の乾いた赤土は細かいパウダー状となり、踏めばタイヤや足が沈み、進めば砂煙が宙を舞って視界を遮るような路面となっている。ひとたび雨が降ればヌタヌタの泥となって行く手を阻み、いずれにしても厄介な路面状況であることに変わりはない。

アジアンラリーを象徴するような、我々メディアにとっていわゆる「見せ場」というのは、前日のスタックポイントで苦しむ参加者たちの悲惨な光景もなかなかのものだが、たいがいは南国ならではの川渡り、いわゆる「濡れ場」が最大の盛り上がりポイントとなる。

ところが、コマ図に示された「RIVER」や「BRIDGE」に水は無く、あったとしても川とは呼べないレベルの水量で、盛大に水しぶきを上げる車両や、南国ならではの川を期待して見せ場に向かう我々メディアとしては、都度裏切られた気持ちになる。

裏方の話をすれば、運営サイドはメディア向けに毎晩オススメの撮影スポットをいくつか紹介してくれるのだが、正直言って、そのほとんどはアテにならない。実際にその場に行ってみると、水が無い、背景が美しくない、立っていられる場所が無い、そもそもそこへ行くだけで1日が終わってしまうなど、理由はさまざま。

ということで、日本人だけではない複数のメディア班は、各々独自リサーチしたうえで当日の朝、向かう場所を定めて参加者たちよりも先回りしてルート上へひた走り、バイクやクルマがやって来るのを待ち構える。

SS5は距離約230kmでMAXタイムは6時間。Motoクラス(二輪)最初のライダーは朝7時にホテルを出発し、8時20分にSS5のスタートを切る。

前日の影響でバイクの出走台数はやや減ってしまったが、撮影班は生き残ったライダーを記録に収めるべく、撮影ポイントを変えていろいろな風景を探し求めて移動する。

と言っても、すべてのルートが公開されているはずもなく、メディアもコマ図を見ながら「きっとここがオンルートだろう」と、競技者と同じ条件で道を探すわけで、現地ドライバーに進む道を指示しながらラリー気分を味わうことになる。これはこれでまた楽しい。

もちろん、すべてのルートを走り、その光景を目にできるのは競技者だけに与えられた特権で、走り終えたライダーに「あの景色はヤバかった」「日本では見られない光景に心を奪われた」「こんな道、日本では絶対にありえない」といった話を聞いてしまうと、つい悔しくなってしまう。

あっという間に過ぎてしまった5日間。最終日を迎える明日は午後にフィニッシュセレモニーがあるため総走行距離は短いが、きっと参加者にしか享受できない、素晴らしい体験が待っていることだろう。

最後まで「生き残る」ことが出来たからこそ得られる体験が、アジアンラリー最大の魅力と言える。

(写真・文/田中善介)

Provisional Result Leg5
PDF
AUTO
PDF
MOTO, SIDECAR
Provisional Result Leg1+2+3+4+5
PDF
MOTO, SIDECAR
Official Result
PDF
AUTO
Start List Leg5
PDF
AUTO
PDF
MOTO, SIDECAR

Sponsors

Sponsors

PROPAK
WELPORT CORPORATION,LTD.
CHUOH TECHNICAL SCHOOL

Cooperation

Cooperation

BERIK
COMEUP_WINCH
E_CARGO
RAEMCO
RALLIART
TOP4x4
 
Tras
PERFORMANCE TRD
VVP4x4
 
YOKOHAMA
Web!ke
WÜRTH